AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

ライトノベル『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (12)』感想

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 渡航によるライトノベルやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (12)』を読み終えまして、感想を綴ります。

 

ライトノベルやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (12)』あらすじ

 たとえ、その選択を悔いるとしても
 バレンタインデーのイベント、水族館での雪の日を経て、自分たちが踏み出すべき一歩を定める八幡たち。そんな奉仕部に、ある大きな依頼が持ち込まれる。その依頼に対して、雪乃が決意と共に出した答えとは……。――たとえ、その選択を悔いるとしても――。時間の流れがいつか自分たちを大人にするのかもしれない、出会いと別れを繰り返して人は成長するのかもしれない。でも、いつだって目の前には「今」しかなくて――。それぞれの想いを胸に抱えながら、八幡、雪乃、結衣が選ぶ「答え」とは。新たなる青春群像小説、物語は最終章へ。
小学館より引用)

www.shogakukan.co.jp

 俺ガイルシリーズの最新巻です。第11巻が発売されて(2015/6/24)から約2年振り(2017/9/19)になっています。表紙は第8巻以来の雪ノ下雪乃です。ネタバレになりますが、本巻ではシリーズが完結しないのに、ゆきのんを最終刊の表紙に温存しなくても大丈夫なのでしょうか?
 内容は11巻の終わり、雪ノ下の依頼を聞いてほしいというところから始まります。簡単にまとめると家の跡継ぎになりたいということなのですが、刊行ペースの開き具合に加えて、12巻での比企谷たちの歯切れの悪さ、さらには夏休み辺りから冬休みまでの出来事(4~11巻)を回想し始めます。発刊が遅れたとはいえ、いくらなんでも巻き戻りすぎてテンポが悪かったです。そんな頃、一色いろはがプロムナード(舞踏会)をやりたがり、それに奉仕部が付き合うものの、様々な問題が起こり始めて……というストーリーです。プロムの開催が軸になってくるのですが、300ページ超費やして計画練り直しに終わります。そして登場人物たちの気持ちの落とし所が用意されておらず、あまり読後感のよくない内容になっています。

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ポケGO日記1「ライコウゲットチャレンジ」

2017年10月1~10日のポケ活日記

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 秋分の日イベントが終了し(~10/4)、伝説ポケモンでは10/1からライコウが解禁となった。トレーナーレベル25の自分にとってレイドバトルは経験値だけでもおいしい。だけど手持ちにCP2000超えはバンギラスシャワーズだけで、ライコウ(電気タイプ)に対して強いポケモンが居ない。戦力になれずに申し訳ないと思いつつも名古屋市内で2日に1回はレイドバトル。選出ポケモンが全滅しつつも他の参加者が健闘してくれたおかげでライコウをゲットできた。

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アニメ『Fate/Apocrypha』1クール目途中感想

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 アニメ『Fate/Apocrypha』(2017年夏)1クール目を見終えまして、感想を綴ります。

アニメ『Fate/Apocrypha』あらすじ

INTRODUCTION
 一族の悲願のため強奪した大聖杯を象徴に掲げ、魔術協会からの独立を目論む黒の陣営。彼らの野望を阻止せんと魔術協会によって招集された赤の陣営。ルーマニア・トゥリファスを舞台に、二つの陣営に召喚された英霊十四騎によって繰り広げられた聖杯大戦は、此度の大戦の監督役である赤の陣営のマスターの一人、シロウ・コトミネによってその様相を変える。
 大聖杯による全人類の救済を願うシロウ・コトミネ――“奇跡の子”天草四郎時貞。 ルーラーとして聖杯大戦の調和を願う――“聖女”ジャンヌ・ダルク。“竜殺し”の力をその身に宿し、己の願いの為剣を取る、何者でもなかった少年――ジーク。それぞれの願いの果てに、“外典”が紡がれる。
(TVアニメ「Fate/Apocrypha」公式サイト・WORLDより引用)

fate-apocrypha.com

 Fateシリーズの最新作シリーズアニメです。魔術師たちが英霊を召喚して聖杯戦争をするという主軸はそのままに、今作は「黒」の陣営と「赤」の陣営のチーム戦による「聖杯大戦」というのが大きな魅力です。

 ちなみに自分はFateシリーズをアニメ『Fate/Zero』しか見たことのない(原作ビジュアルノベルや小説を読んだことのない)"にわか”です。『Fate/Apocrypha』の小説も読んでいません(Wikipediaやウェブページ等でストーリーや設定は知っています)。

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ポケモンGO外配信機材等一覧

www.nicovideo.jp

 最近になってスマートフォンゲームアプリ『Pokémon GO』(以下「ポケモンGO」)をプレイし始めました。ですがそれ以前にニコニコ生放送等での配信も行っていまして、この2つを組み合わせたいと試行錯誤していたのですが、ようやく配信環境が整ってきました。なので備忘録の意味合いも込めてその状況を紹介します。

 

HUAWEI P10 lite

 ポケモンGOプレイ用スマートフォン。RAM:3GBでそれなりにアプリ動作安定性があり、手頃な価格で使いやすいです。デザインからもAndroidiPhoneのような印象を持ちます。画面サイズ:5.2インチ、カメラ:1200万画素、バッテリー容量:3000mAh

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アニメ『賭ケグルイ』感想

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 アニメ『賭ケグルイ』(2017年夏)全12話を見終えまして、感想を綴ります。

 

アニメ『賭ケグルイ』あらすじ

 ギャンブルの絶対的な掟。それは、勝負の果てに勝者と敗者が存在すること。勝者は富と栄誉を手にし、敗者は落伍者の烙印を押さえ、大いなる喪失を味わう。勝負が決するまでの静寂の中、本能は掻き立てられ、欲望は恍惚の境地に到達に到達する。資本主義の社会において、それはまさに人生の残酷なる縮図。人はなぜ、リスクを負う世界に心を奪われるのか? その狂気の先に目にするものとは。
 現代社会に存在する階級を崩壊させる! かつて体験したことのない"アドレナリン分泌系アニメ”が2017夏、誕生する。
(TVアニメ「賭ケグルイ」公式サイトより引用)

kakegurui-anime.com

 

 良作です。社会現象を巻き起こすほどの内容ではないですが、洗練されたキャラクターデザインと、漫画原作のストーリーを滞りなく進めていく脚本のテンポのよさで、簡単に楽しめます。

 ほとんど1~2話完結型で、

(起)種々の事情でギャンブル勝負をすることになる
(承)イカサマを仕掛けられる
(転)イカサマを見破り立場が逆転する
(結)ギャンブル終了、後日談となり、次なる相手が見え隠れする

 というのがおおよその流れです。こうなると主人公である蛇喰夢子や、その対戦相手となるキャラクターに深みを持たせるのが難しくなりますが、その辺りを奇抜な見た目やパンチラなどで補い、代わってギャンブルの駆け引きの描写に時間を割くことでアドレナリンが大量に出る展開へとつながってゆきます。
特に蛇喰夢子の「狂ってしまいますわ!」の決め台詞はわかりやすく、見る側にここから逆転劇が始まることをしっかり伝えてくれます。

 

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 諸手を挙げて評価できない点もたくさんあります。
 まずはギャンブルそのものがあまり深くない点です。ゲーム装置のように働いていて、他のギャンブルものやコンゲームものにはある深い戦略性や、プレイヤー間での複雑な利害関係、さらにはゲームルールの真の意図がありません。ただ、ゲーム性が浅いからこそテンポのよさと適度なエンタメ感を実現できているわけでもありますから、一概に悪いとはいえないと思います。
 ギャンブルものにリアリティを求めるのは酷でしょうが、それでもあまりにも現実感が無さすぎます。蛇喰夢子やその他生徒会のメンツがギャンブルの強さを裏付ける狂ったメンタリティを持つのは一定の理解があるとして、解説役の鈴井涼太がなぜギャンブル学園に入学したのかは理解に苦しみますし、どうやら人畜無害な生徒が多数派である私立百花王学園そのものを肯定することが難しいです。加えて、学園であるなら居るべき教師陣が一切描かれていません。
 少しサポートするならば、圧倒的なギャンブル勝者を生むためには大多数の敗者が居なければならず、ゆえに一般生徒が多いのは当然ともいえます。鈴井涼太についても、物語の進行上こういったキャラクターは必要上生まれたといえます。大人が描かれないことで蛇喰夢子と生徒会たちのギャンブル狂いは青天井となり、ティーンエイジャー特有の限りない想像の力で話がどこまでも面白くなってゆきます。

 

 アニメ『賭ケグルイ』は全12話構成で、第1~5話辺りまでは前述の通りにテンポがよかったのですが、6~9話辺りが中だるみ気味だったのが残念でした。個人的には原作からのギャンブル題材そのものがそれほど面白くなかったと感じましたし、アニメでの作画もあまり調子がよくない気がしました。第8~9話はアイドルがテーマであり、歌ったり踊ったりとかなりアニメ演出的な負荷がかかる内容だったのですが、そこで完全に息切れを起こしている印象でした。序盤における蛇喰夢子の“無敵感”が勝利展開を容易に予想させてしまったのも原因かもしれません。
 その分、第10話~最終話まではインフレとばかりに賭け金が増えてゆき、またギャンブル相手である豆生田も随分骨のあるキャラクターであったことから盛り上がったかと思います。

 最終話もきれいにまとまっています。第2期があるかどうかわかりませんが、ひとまず見通してよかったと思えるアニメです。その際にはまたNetflixで放送してほしいですね。

 

ポケモンGO

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 この秋からスマートフォンゲームアプリ『PokémonGO』(以下「ポケモンGO」)をプレイし始めました。
 相当有名なアプリなので詳しい説明は省きますが、スマホの位置情報とARを組み合わせることで、あたかも現実世界にポケモンが現れるようになり、それらをゲットしたり戦わせたりするゲームです。自分も配信開始当初はやっていましたが、その時はまだ内容の成熟度が低く、また位置情報の都合ゆえに外出する必要があったのですが、(7月で)暑くて楽しめる余裕がありませんでした。その他、ゲーム情報が整理されていなかったり、スマートフォンの電池消費が激しくて長時間プレイできなかったりする問題もありしました。

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2017年8月の映画鑑賞リスト

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

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 魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、魔法動物の調査と保護のためニューヨークを訪問する。ある日、彼の魔法のトランクが人間のものと取り違えられ、魔法動物たちが人間の世界に逃亡してしまう。街中がパニックに陥る中、ニュートはティナ(キャサリン・ウォーターストン)らと共に追跡を開始するが……。
シネマトゥデイより引用)

映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 - シネマトゥデイ

 登場人物たちがある程度の年齢を重ねているせいか、「ハリー・ポッターシリーズ」にはあったはずのワクワク感が薄い気がした。

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いまさらスター・ウォーズ

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 今更ながら、「スター・ウォーズシリーズ」を見ました(エピソード1から7まで順に、『クローン・ウォーズ』など外伝はまた別の機会に)。


 Wikipedia巡りをしていたらいつの間にかスター・ウォーズシリーズのページに辿り着いてしまい、その圧倒的な歴史物語に取り込まれてしまいました。
 スター・ウォーズはエピソード1と2しか見ていなくて、それとアナキン・スカイウォーカーダース・ベイダーに転身することしか知らなかったのですが、ネタバレをガッツリ読んだので、パルパティーン議員がシスの黒幕であることを分かった上でストーリーを追っていました。

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HUAWEI P10 lite

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 スマートフォンを替えました。HUAWEIのP10 lite(AndroidOS)です。
 変更前はY!mobileの402SH(AndroidOS)を使っていました。いわゆる格安スマホなのですがそれほど不満はなく、コストパフォーマンスに優れていたので方向性はそのままに、あとは自分の要求に照らし合わせて機種性能や通信回線を調べていたところ、楽天モバイルで取り扱っている当機種・当通信環境が妥当だと考えて契約しました。

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2017年8月の読書リスト

 伊坂幸太郎 アイネクライネナハトムジーク

 ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL……。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが紡ぎ出す、数々のサプライズ!! 伊坂作品ならではの、伏線と驚きに満ちたエンタテイメント小説!
幻冬舎より引用)
http://www.gentosha.co.jp/book/b8087.html

 テンポよく読める日常系ミステリ。連作短編で、ある脇役が別の短編では主役など、人物相関図を想像するだけで楽しい。伊坂ファンならオールドにも新規層にもおすすめ。

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俺自身がゆかりさんになった未来

www.nicovideo.jp

 最近になってWebカメラによる表情モーションキャプチャ「FaceRig」にはまっています。そして生放送にてテストしてみました。

 動画内(生放送内)にて使用した主要ソフトは以下の通りです。

  • FaceRig

http://store.steampowered.com/app/274920/FaceRig/?l=japanese

  • Live2D

http://www.live2d.com/ja/

  • Yuzuki Yukari [Live2D content]

http://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=630129247

  • ゆかりねっと

http://www.okayulu.moe/

  • VOICEROID2 結月ゆかり

http://www.ah-soft.com/voiceroid/yukari/

その他配信ツール:OBS studio・棒読みちゃん・アンコちゃん

 仕組みとしては、FaceRigによって自分の表情が認識され、それがLive2DとYuzuki Yukari [Live2D content]モデルによって結月ゆかりとなり、画面に映し出されているというわけです。
 通常、VOICEROIDは読み上げたいテキストを入力する必要がありますが、ゆかりねっとを使うとgoogle音声認識によって喋った言葉が随時文字変換され、それをVOICEROIDが読み上げる、という構成になっています。ゆかりねっとには音声入力を字幕化する機能もあるので、それも活用しています。FaceRigでは表情認識以外の情報は捨てられるので、撮影背景が整っていなくても問題ありません。ゆかりねっとではマイクに音声認識フィルターを通すためにノイズは発生せず、棒読みが好ましいために声を出すのが苦手でも大丈夫です。

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新書『理系脳で考える』感想

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 成毛眞『理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件』を読み終えまして、感想を綴ります。

 

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件・あらすじ

 AI時代を生き残るには、あなたが「理系脳」であるかどうかにかかっている! 仮説検証を行い、挫折もものともせずに未来を面白がる。これが成毛流・理系脳の定義だ。「文系出身で……」と負い目がある人でも身につく、シンプルな習慣とは。
朝日新聞出版より引用)
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19276 

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PS4ゲーム『ドラゴンクエスト・ロトシリーズ』感想

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 PS4ゲーム『ドラゴンクエストロトシリーズ』をクリアしたので感想を綴ります。

 

ドラゴンクエストロトシリーズ・あらすじ

 平和だったアレフガルドの世界に闇の覇者・竜王が現れ、世に平和をもたらしていた「光の玉」を奪い去ってしまった! ふたたび闇に閉ざされた世界を救うため、伝説の勇者・ロトの血を引く主人公、つまりあなたは、竜王討伐の旅に出る――。
SQUARE ENIXドラゴンクエストより引用)
http://www.dragonquest.jp/roto/

 前作「ドラゴンクエスト」から100年後、かつてアレフガルドの地を救った勇者の血を引く子孫によって新たに3つの国が興された世界。そこに現れた大神官ハーゴンは魔物たちを闇の世界から呼び出し、世界を破滅に導こうとしていた! ローレシアの国の若き王子はハーゴンを討伐すべく、同じ勇者の血を引く2人の仲間を探し出すため旅立つ。
SQUARE ENIXドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々より引用)
http://www.dragonquest.jp/roto/

 小国アリアハンの勇敢なる戦士・オルテガの息子である主人公は16歳の誕生日を迎えたある日、王様から重大な使命を告げられる。それは、亡きオルテガの遺志を継ぎ、闇の国より現れた魔王・バラモスを倒すことだった。世界を救うため旅立った主人公を待ち受けていた驚きの運命とは……⁉
SQUARE ENIXドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…より引用)
http://www.dragonquest.jp/roto/

 ドラゴンクエストⅠ~Ⅲの「ロト」を巡る同一の世界観をロトシリーズと呼びます。2017年に発売された『ドラゴンクエスト過ぎ去りし時を求めて』ではこのロトシリーズと深い関連性を持つことから話題を集めました。

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小説『殺人出産』感想

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 村田沙耶香による小説『殺人出産』(講談社文庫)を読みまして、感想を綴ります。

 

小説『殺人出産』あらすじ

 今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。表題作、他三篇。
講談社BOOK倶楽部より引用)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062934770

「10人子供を産んだら1人殺せる」というもしもの世界を描いた小説です。純文学寄りの一般文芸で、SF(すこしふしぎ)に属する内容となっています。
 普通の会社員である育子、育子の姉で産み人(<殺人出産>を試みる人)となった環、育子の従妹で<殺人出産>に興味を持つミサキ、<殺人出産>の世界を変えようとする早紀子をはじめとする様々な視点から生と死の倫理観が語られ、常識/非常識のゆらぎを緻密に描いた作品です。
 講談社文庫にて110ページ構成というやや長めの短編ですが、その内容の奇抜さ、そして文章の巧みさ、さらには著者の村田沙耶香さんが芥川賞(2016年『コンビニ人間』)を受賞したこともあって、とても評価されている『殺人出産』です(ちなみに『殺人出産』も2014年にセンス・オブ・ジェンダーを受賞している)。

 

感想

 面白いですし考えさせられもしますけど、粗さもかなり残る作品だと思います。作品舞台の年代が具体的に語られてはいませんが、「10人子供を産んだら1人殺せる」という<殺人出産制度>が施行されてから100年後の世界とされています。その施行の理由が、避妊技術が発達して偶発的な出産がなくなったから、とされています。作中における一部の技術を除けば、作中の年代は私たちが住む2010年代とそれほど大差ないです。ところで2015年発表の日本国勢調査では、初めて人口減少が確認されたので、“もしもの世界”でその年に<殺人出産制度>が施行されたとして、作中の世界は2110年代でしょうか。
 とすると、作中の描写に違和感を持ったり、話の流れに乗れなかったりするところがあります。まず人工子宮の存在です。作中では男性も<殺人出産>ができるように人工子宮が開発され、制度として活用されていますが、そうそこまで技術が進歩したなら人工生命まで到達しているのではないかと予想できます。ですが、そういった状況にはなっていなくて、しかも無痛分娩といった現代技術も進化せず、<殺人出産>の負荷に耐えられずに死んでゆく人物が居ます。アイデアと思想だけが先を行きすぎて細部の辻褄が合わさっていないように感じられます。
 <殺人出産>の条件を達成すると、<死に人>(<殺人出産>の権利を使われる人)は法的な拘束を受けます。絶対的に死ぬ運命にあるというわけです。作中でも育子は、環が<殺人出産>の権利で指名するのは自分じゃないか、と怯える場面があります。これはもっともらしく、この抑止効果が社会全体に働いて優しい世の中にあるかと思いきや、いじめやセクハラやパワハラのある日常というオチでした。人の悪意というのが消えることはない、とも受け取れますが、やっぱり行動に整合性がないといいますか、矛盾が多いなと思います。
 止めは「たとえ100年後、この光景が(以下略)」をはじめとする世の末を憂う描写です。作中に未来感が薄いのに、そんなことを語られても同調することができません。この短編の軸は「生命倫理」であり、その問題提起の持ち上げ方はかなりよかったわけですが、その代償としてSF要素が入ってしまい、紙幅の短さも相まってまとめきれていない印象が残りました。

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