AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

新書『暇と退屈の倫理学』書評感想

 

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 部屋の掃除をしていたら見つけたので、読んでみて思ったことを書き綴る。

 

暇と退屈の倫理学 増補新版 國分功一郎

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「暇のなかでいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきかという問いがあらわれる。<暇と退屈の倫理学>が問いたいのはこの問いである」とあるように、本書は「暇とは何か?」、「退屈とは何か?」という問いからはじまり、哲学を中心としつつ人類学、経済史学、生物学を交えて、生きることを考えてゆく哲学書である。
 自身は哲学に対して無知であるので、本書の内容を十全に理解できたとはいえないが、興味深い議論があり、やや冗長な部分、難解なパートも多かったように思う。「暇とは、何もすることのない、する必要のない時間」、「退屈とは、何かをしたいのにできないという感情や気分」として、主に退屈について様々な角度から論じている。

 本書の主張としては、人間は退屈する生き物であり、そのメカニズムを知り、贅沢をすべし、というものである。
 まず、暇というのは日常生活におけるエアポケットのような時間であり、これの活用が上手い人は思索に耽ったり芸術に勤しんだりする。しかし人は必ずしも暇をプラスに考えることができず、退屈というマイナスなものとして捉えてしまう。そしてこの退屈というのは、例えば列車の待ち時間や、自ら望んで参加したパーティの後や、そして何かに熱中している際にさえふと訪れる。人は退屈から逃れることができない。本書ではこういったことを理解しつつ、趣味から趣味へと視点を変化させ続ける、このことによって退屈と向き合って生活してゆくことを諭している。

 読み終えてから振り返ると、「”暇と退屈”を哲学問題として捉える」というコンセプトは面白いが、結局の主張が凡庸というか、肩透かしを食うものがある。また近年の娯楽の多様性・安易性・消費性に警鐘を鳴らしてはいるが指摘が不明瞭で具体策も曖昧である。しかしながら文章は平坦で読みやすく、頁数の多さや議論のボリュームの大きさと比べて安価である。良い意味で、暇潰しや退屈凌ぎにはもってこいの『暇と退屈の倫理学』である。

 

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)