2016年4月から放送されていたアニメ『キズナイーバー』全12話を見終えたので、遅れながら感想を綴ります。
キズナイーバー
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』など数多くの青春劇を手がけた岡田麿里が脚本を手掛け、キャラクター原案に漫画家・三輪士郎を、そして『キルラキル』『神撃のバハムート GENESIS』などで絵コンテ・演出を手掛けた若手実力派・小林寛を初監督に迎えて動き出した新プロジェクト。
キズでつながるキズナの物語―。少年少女たちの「痛み」を分け合う青春群像劇がいま、始まる!!
舞台は、埋立地に作られた街・洲籠市。かつては未来型都市として栄えたこの街に住む高校生・阿形勝平は、なぜか痛みを感じない不思議な身体を持っていた。夏休み目前となったある日、勝平は謎の少女・園崎法子の手引きにより、痛みを共有する仲間「キズナイーバー」の一人に選ばれてしまう。そして、同様に「キズナイーバー」として繋がれたクラスメイトたち。しかし、彼らは本来なら仲良くなることのない別々のグループに属していた。
園崎は言う「これは、争いに満ちた世界を平和に導くための実験なのです。」その言葉とともに数々の試練が彼らに降りかかる。
互いの傷を背負うことになった、少年少女たちのひと夏の物語がここから始まる!
(TVアニメ「キズナイーバー」公式サイト・STORY・#INTRODUCTIONより引用)
突如として痛みを共有することになってしまった高校生男女による物語です。ストーリー要素を列挙するなら、オリジナル脚本、青春、SF、哲学系、といったところでしょうか。
何よりもこのアニメ、掴みが素晴らしいです。登場するキャラクターの性格もよく分からないままに彼らは「キズナイーバー」にされて、いきなりの脱出ゲームが始まります。それだけ強引な展開なのに、魅力的なキャラクターデザイン、秘密が隠されていそうな街の雰囲気、象徴的な痛覚描写が、今後の想像を膨らませます。
もちろん序盤だけでなく、話数が進む度にキズナの謎が少しずつ明らかになり、各キャラの内面が明らかになり、そしてより掘り下げた問題や事件が起こってゆきます。それだけ設定が作り込まれた王道的SFストーリーであり、なおかつ“共感”しやすいのが本作の特徴です。
キズナシステムとは
キズナシステムとは繋がれた者同士で痛みを等しく分け合うシステムです。物語の序盤では“痛み”は殴る・ぶつかる・スタンガンを当てられるといった身体的な痛みですが、中盤では不安や動揺といった精神的な痛みまで共有することになります。
キズナシステムは「他人の痛みを実感して得ることが、争いのない平和な世界を導く」という考えのもとで運用されていました。しかし「痛みの分配が上手くいかない」、「痛みを共有したところで心を開くとは限らない」といった理由から目的は達成されず、主人公たちのキズナシステムは解除されてしまいます。
しかしながら、キズナシステムが無くなってこそ他人のことを思いやるようになり、より人間関係が深くなるところが興味深いところです。
『あの花』との関係性
『キズナイーバー』の脚本が『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の岡田麿里だからなのか、ついつい考えてしまうのですが、キズナシステムと『あの花』の“めんま”は作中で同じ役割を果たしていると思います。
『あの花』は、引きこもりの主人公・“じんたん”の元へ突如、死んだはずの“めんま”が現れます。それにより、幼い頃に仲の良かった6人組「超平和バスターズ」が再結集し、過去の出来事を受け入れてゆく、という物語です。
- キズナシステム
ざっと書き出すと、上記のような構図をとれます。なので、『あの花』は思い出から、『キズナイーバー』はシステムから友情を描くという、出発点が異なるだけで方法とゴール地点は同じアニメだと思います。
『キズナイーバー』は少し作画の崩れたシーンや、書き込みの少ないカットが多かったのを何とかしてほしかったです。
それと各話タイトルが“寒い”です。
第1話 一目あったその日から、絆の花咲くこともある
第2話 こんな異常事態カンタンに飲みこめんなら、バリウムなんざバケツ二杯は軽く余裕だっつーの
第3話 どんなにさんざんな状況だって、捉えかた次第でなんとかやっていけるかも……ねっ?
第4話 せっかく繋がりあったんだしさ、もっとお互いわかりあおうよん
第5話 ひゃっほい、合宿だぁ! 鹿のフン踏んで枕投げしてゴーゴー!
第6話 あんた達といると、ほんっとにろくなことがない
第7話 七分の一の痛みの、そのまた七倍の正体に触れる戦い
第8話 ハッピーな時間って、そうそう長くは続かないものだよね
第9話 万事休す……かしら
第10話 好きな気持ちがむくわれないかもなんて、重々承知の上だろ?
第11話 いちいち連絡しあって気持ちを確認しあわないと。だって、友達なんだから!
第12話 世界中に、キズナシステムが広がって
ただし、高校生らしい“たどたどしさ”が愛おしいとも思います。
『キズナイーバー』の物語の結末の善し悪しは人それぞれとしても、本作のエンディング映像が最高です。白色の背景と、キャラクターの全身を“写さない”カットと、「花」が印象的で、たぶん本編を見ていない人でも惹かれると思います。
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