AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

ブログを毎日書け/ノンフィクション『ファスト&スロー』感想

 

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 ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』を読み終えたので、感想を綴ります。

 

ファスト&スロー 

 我々の直感は間違ってばかり? 意識はさほど我々の意思決定に影響をおよぼしていない? 伝統的人間観を覆す、ノーベル経済学賞受賞者カーネマンの代表的著作。今年度最高のノンフィクション。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)

 伝統的な人間観を根底から覆し心理学者にして、ノーベル経済学賞に輝いた著者の代表作。待望の邦訳。私たちは日々、無数の意思決定をなかば自動的に行なっている。カーネマンは、直感的、感情的な「速い思考(システム1)」と意識的、論理的な「遅い思考(システム2)」の比喩をたくみに使いながら、意思決定の仕組みを解き明かし、私たちの判断がいかに錯覚の影響を受けているかを浮き彫りにしていく。人間はこれまで考えられていた以上に不合理なのだ―。プライベートやビジネス、政治における、よりよい決断への道筋を示し、あなたの人間観、世界観を一変させる、21世紀に生きるすべての人、必読のノンフィクション。

 ノーベル経済学賞受賞者による、一般向けの意思決定メカニズムに関する著作です。著者は認知心理学者なのですが、“経済学賞”を受賞してしまったという事実だけで興味深いです。いわゆる「変わった経歴の人の話は面白い」法則です。

 

【著者情報】(「BOOK」データベースより)

カーネマン,ダニエル(Kahneman,Daniel)

 認知心理学者。プリンストン大学名誉教授。専門は意思決定論および行動経済学。1934年テルアビブ生まれ。幼少期をパリで過ごし、その後、家族とともにパレスチナに移住。エルサレムヘブライ大学で心理学と数学を学んだ後、イスラエル国防軍心理学部門に勤務した。1958年にはアメリカに移住し、カリフォルニア大学バークレー校で心理学の博士号を取得。その後、ヘブライ大学などで教鞭をとり、1993年より現在も在籍するプリンストン大学の教授となった。

 

 本書は大きく分けると3部構成になっています。

・2つのシステム

(直感的で早い思考のシステム1と、論理的だが怠けやすく遅い思考のシステム2)

・エコンとヒューマン

(首尾一貫した論理的なエコンと、確率や統計をうまく扱えないヒューマン)

・2つの自己

(経験によって判断する自己と、記憶によって判断する自己)

 端的にいって、「2つのシステム」における“遅い思考”を人は様々な局面で行わないので、教科書通りに人は動かず、結果として判断を誤る、ということを述べている本書です。

 

 ブログと関連づけて語るなら、「2つの自己」が取り挙げたいです。このテーマでは、

「ある患者が、毎日痛い注射受けているとしましょう。この注射はいっこうに慣れるということがなく、毎日同じように痛いとします。この場合、注射の回数を20回から18回に減らすのと、6回から4回に減らすのとでは、患者にとっての価値は同じでしょうか。もしちがうとしたら、正当な理由がありますか?」

という問題において、筆者は「6回から4回」に減らす方に大きな価値があると判断されがちだと予想します。

だがよく考えてみると、これはばかげている。苦痛が毎日同じなら、なぜ最後の2回分の注射が減ることに対して異なる効用を認めるのだろうか。

というアイデアから、

・ピーク・エンドの法則――記憶に基づく評価は、ピーク時と終了時の苦痛の平均でほとんど決まる。

・時間維持の無視――検査の持続時間は、苦痛の総量の評価にはほとんど影響をおよぼさない。

という考えに辿り着きます。「過ぎたるは及ばざるがごとし」とか「終わりよければすべてよし」とかということです。そしてそこから、例えば「治療方法は痛くなく長くか、痛くて短くか」という実際の指針選択へ展開してゆきます。

 

 ブログでも、例えば毎週のドラマとかアニメとかの感想を、週毎に投稿する人もいますし、何話分かまとめて、または完結してから総評する人もいます(もちろん両方する人もいる)。前者は経験に基づく評価であり、後者は記憶に基づく評価だといえます。つまり本人たちの性格とか好みとか以前に、評価を出す方法が違うので、結果として様々な感想が生まれるのかな、と考えました。

 著者によれば、人は「ピーク・エンドの法則」に支配されがちだそうですけど、ブログはそれこそ1つひとつの記事がその時々での経験的なものであり、物事をより合理的に考えられるよい環境であるといえます。

 結論として、「ブログを毎日書け」という(脅迫的な)メッセージを受け取れる本です。

 

 

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)