第116回触媒討論会
先日、三重大学にて第116回触媒討論会が開かれ、研究の傾聴と発表を行いました。
今回はそのレポートです。
今学会では工業触媒や環境触媒、さらにはコンピュータを利用した触媒の理論研究など、
触媒に関するほぼ全ての分野の発表がなされていました。
また、どの発表にも100人近い席のある会場が用意されたのですが、
時には立ち見もできなくなるほどの大勢の方々が聞きに来ていました。
その中でも1つ、私の印象に残った発表を取り上げてみますと、トヨタ自動車による
「排ガス浄化用 Au-Rh バイメタリッククラスター担持触媒の研究」という発表です。
当研究はガソリン自動車の排気ガスを浄化する三元触媒についてです。
窒素酸化物(NOx)を浄化するためによく用いられるロジウム(Rh)は、
排気ガスによって容易に酸化されて触媒活性を失うことが知られていますが、
酸化され難い金(Au)をRhに複合化したAu-Rhバイメタリッククラスターにすることで、
触媒性能が向上するという内容です。
金はどこかの保管庫の中に入れておいても錆びない(酸化しない)ですが、
高温・高酸化雰囲気でも酸化しづらいという特性を持っています。見方を変えると金は、
酸素などと反応を起こしづらいため、触媒には不向きな金属ともいえます。
しかし最近、金はその粒子を小さくすると特異的な触媒活性をもつということが分かり、
金とさまざまな材料や状況を組み合わせた研究が進められています。
今回の発表では性能が向上したAu-Rh触媒は排気ガスの浄化中でRhの金属割合が
高くなっていることがOperando-XAFS解析から分かったため、
性能向上とその理由が一貫していて理解しやすい反面、
なぜ酸化されやすいRhが酸化したままではなく、酸化されにくいAuに酸素が
移動するのか、一般的な化学法則と矛盾していないか、という点が現在の分析技術では
解明できないらしいので、より謎が深まってしまったようにも思える研究だと感じました。