AYUTANINATUYA

脱サラ大学院生(20代)。愛知県在住。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。ニコニコ生放送にてよく投稿記事を生執筆している。

新書『理系脳で考える』感想

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 成毛眞『理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件』を読み終えまして、感想を綴ります。

 

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件・あらすじ

 AI時代を生き残るには、あなたが「理系脳」であるかどうかにかかっている! 仮説検証を行い、挫折もものともせずに未来を面白がる。これが成毛流・理系脳の定義だ。「文系出身で……」と負い目がある人でも身につく、シンプルな習慣とは。
朝日新聞出版より引用)
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19276 

 

感想

 はじめに、この本を読むまでもなく自分は理系脳の持ち主だと考えていまして、またその通りでした。なぜ手に取ったかといいますと、売れていましたし、(自身はブログを書くのが趣味なのだが)文系理系論争はネタにしやすいですし、なおかつ理系的な立場から理系賞賛の本書の内容を突き詰めてゆくのが面白そうだったからです(つまりは最初から当たり屋気分だったということ)。

 正直いっておすすめできない内容です。「理系脳で考える」という目的には一定のよさがあります。理系脳の条件とは以下の通りです。

  • 理系脳の条件1 新しいものに興味がある・変化が好き
  • 理系脳の条件2 刹那主義で未来志向
  • 理系脳の条件3 コミットの範囲が明確
  • 理系脳の条件4 コミュニケーションが合理的

(【第1章】理系脳だけが生き残る時代より引用)

 これらの条件を満たすと理系脳になることができ、その波及効果としてAI時代でも生き残ることができる、というのが本書の主張です。厳密にいうと「理系になれ」ではなく「“理系脳”になれ」なので、事務や営業といったクリエイティブでない仕事をやっていても問題ないです。しかしながら、理系・理系脳を推奨しすぎたあまりかサイエンスへの過剰な絶賛が目につき、また文系職種への軽蔑もひどいです。


『理系脳で考える』の冒頭にも紹介されていますが、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」は以下の通りです。

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野村総合研究所 日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に ~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~より引用)
https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx


 この一覧から、クリエイティブな理系脳を持ち上げ、非クリエイティブな文系脳を謗っています。しかしよく見てみると、観光バスガイド・小学校教諭・バーテンダーといった非クリエイティブな文系脳(と考えられる)もAI時代には生き残るようです。その点について『理系脳で考える』は言及していません。この辺りのデータの扱いが粗雑であり、また本書の根幹をなす「正しいコミュニケーションを行う」を自ら破ってしまっています。
 統計結果の考察をすべて書き出すと長くなってしまい、紙幅の都合もあるでしょうからどこかで折り合いをつけなければなりません。本書後半のYouTubeや『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』についての内容は削り、よりデータの説明に文字数を費やすべきだったと思います。他の話における展開の仕方も、ほとんど筆者の思い込み、または曖昧なアンケートによって書き進められており、内容の客観性・正当性が薄いです。

 ちなみに、AI時代が到達しても、観光バスガイドをはじめとする仕事は、対人コミュニケーションが大きなウェイトを占めるためにAIの代替が難しく、生き残ってゆけるそうです。なので意外にも文系脳こそがAI時代に生き残るためのスキルとも受け取れなくはないです。

 

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au iPhone スペック・機能比較より引用)
https://www.au.com/iphone/product/comparison/

『理系脳で考える』後半では理系脳の手に入れ方が述べられます。戦略的にSNSを使う、最新スマホを使い続ける、スマホには『使えない』アプリを入れる、できた時間は自堕落に過ごす、といったものです。行動により理系脳となってゆくプロセスにはほとんど問題がないと思いますが、例えば実際に最新スマホを使い続ける人は少ないと思います。なぜなら、値段が高いからです。iPhoneAndroid上位機種は、1世代間では改善したスペックが1.5倍程度なのに本体価格は1.6~1.8倍とコストパフォーマンスが低いです。さらにはいわゆる「2年縛り」によって違約金も上乗せされます。なのでこれほどの料金を易々と支払える人はなかなか居ないのではないでしょうか。ここで『理系脳で考える』のいいたいことは「高いデバイス費用は将来への先行投資だと考えろ」ということだと思うのですが、紹介が、表層的な行動方法とそのちょっとした理由だけに留まっていて、深い戦略まで考察されていないのが残念でした。

 持論ですけど、極端な理系脳はよくないと思います。理系は基本的に自分の好きなことにしか興味を持たないので、行き着く世界がどうしても限定的になってしまいがちです。その壁を打破してくれるのが、人との出会いであり、コミュニケーションなわけです。お世辞なども必要になってきます。ゆえに文系脳も必要になってきます。
『理系脳で考える』は文系脳の人が手に取ることを想定されており、本書の内容を実行しても完璧な理系脳にはなり得ないほどソフトなものになっています。なので文系脳の必要性を説く必要はないのですが、中立的な意見があってこそ理系脳はより輝きを増すと思います。