AYUTANINATUYA

脱サラ大学院生(20代)。愛知県在住。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。ニコニコ生放送にてよく投稿記事を生執筆している。

原作漫画からの改変/映画『バクマン。』感想

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 映画『バクマン。』(2015年)を見まして、その感想をまとめてみます。

 

映画『バクマン。

 原作・大場つぐみ、漫画・小畑健、『DEATH NOTE』のコンビが送り出す現代の「まんが道」ともいえる「バクマン。」は、2008年より週刊少年ジャンプにて連載を開始。週刊少年ジャンプとしては異色な内容ながら、連載開始と同時に「DEATH NOTE」ファンはもちろん、サブカルチャーファン、クリエイターファンなど、一般読者から業界関係者にまで幅広い層から熱狂的な支持を受け、全20巻で累計1500万部超えの大ヒットを記録しました。

(映画『バクマン。』公式サイト・INTRODUCTIONより引用)

 高校生の真城最高(あだ名:サイコー/佐藤健)は、高い画力がありながらも将来に夢を持たず、ただ流されて普通に生きてゆくだけの日々を送っていた。最高の叔父(宮藤官九郎)は、かつて習慣少年ジャンプに連載し、その作品がアニメ化された漫画家・川口たろうであった。だが結局は連載打ち切りとなり、その後叔父は過労により亡くなった。そのことが最高の心に暗い影を落としていた。

 ある日、些細な出来事をきっかけに、秀才のクラスメイト・高木秋人(あだ名:シュージン/神木隆之介)に、「俺と組んで漫画家にならないか」と誘われる。はじめは一緒に漫画を描くことを拒否していたが、声優を目指している片思いのクラスメイト亜豆美保小松菜奈)と、「漫画家として、声優として、お互いの夢が実現したら結婚する」と約束したことから、漫画家への道を志すことになる。

(映画『バクマン。』公式サイト・STORYより引用)

 大場つぐみ小畑健による漫画が原作の、青春漫画製作物語です。「漫画の中で漫画の話をする」作忠作という特殊なストーリー構造でありながら、その物語の“熱量”でもって多くのファンを獲得した一作です。

 自分も漫画を全巻持っていますし、NHKのアニメ版(2010年~、全25話)も楽しく見ていました。たぶん『バクマン。』を味わった人は、当作品が他の作品に対する批評教養になったのではないでしょうか。少なくとも自分はそうです。

 

 率直にいって、良いところもありイマイチなところもある映画でした。良いところは、原作の要素を活かしつつも細部の設定が変更されており、実写化されたことでよりリアリティを感じました。そしてとにかく展開が早くて熱く、チャレンジ賛美的な色がよく出ていて、何かを始めたくなりました。もちろん、漫画に対しても関心が高まり、真摯に向き合えるようになりました。

 それと演出もかなり作り込まれている印象を受けました。まずペン入れなどの効果音が好きです。漫画やアニメ版にはない執筆の雰囲気を醸し出していました。『この世は金と知恵』などの作中作の漫画も読んでみたくなるくらい魅力的で、さらにだんだん絵が上手くなっているなど、細かいところも凝ってありました。

 あとは出演者も豪華であり、サイコーを演じる佐藤健により、漫画版の弱々しいキャラクター像は薄れて、反対にシュージンを演じる神木隆之介は、インテリから泥臭い雰囲気に変わっていると思いました。主人公たちのライバルである新妻エイジを演じる染谷将太も、原作キャラクターの変人感・天才感をよく再現していました。それと亜豆を演じる小松菜奈もミステリアスであり、登場シーンが少ないにもかかわらず、見ている人に深い印象を植え付けているはずです。

 

 少し残念だったところを挙げてゆきますと、やはり原作漫画からの改変による歪みが散見するところです。中学生から高校生への設定変更はともかく、作画担当のサイコーがヒロインの亜豆に求婚する理由が曖昧なのは、まずいと思います。まず原作では、サイコーの叔父はモテるために漫画を描き始めており、その姿を見てサイコーは、亜豆に告白するシーンで被らせてしまって求婚してしまう、という流れです。ですが映画では叔父のエピソードが深く語られず、ゆえにサイコーの、「付き合ってください」ではなく「結婚してください」の発言が変に感じました。原作ではその婚約が物語の大きな柱となり、また主人公たちの漫画を描く強い動機にもなっているのですが、そこが映画では弱くなっているので、漫画制作ドキュメンタリーに留まりがちになっています。

 あとは原作漫画20巻分のストーリーを披露するわけにもゆかず、映画ではおおよそ1~6巻分の話です。やっぱりその終わり方に消化不良感が残ります。「勝負に勝って試合に負けた」ように締めてしまうので、それまでのフィルム内にあった活気がどこかへ抜けていってしまう感覚でした。

 でもエンディングは好きです。様々な漫画背表紙のデザインオマージュで製作スタッフの名前が流れてくるのは、単にクレジットが面白いとうだけでなく、僕らが何気なく読んで楽しんでいる漫画にも膨大な歴史があって、テクニックや流行り廃りがあることを実感しました。

 

 登場人物が多いので、原作未読派は見るのが少し大変かもしれません。また漫画の知識というか、漫画にいくらか触れたことのない人は共感できないかもしれません。見るべき人は、漫画に限らず、何かモノを作っている人です。とにかくエネルギッシュな作品なので、映画は午前中に見て、午後に見て得た感触を実行することをオススメします。

 

 

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