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森ワールドはまだまだ続く/小説『φは壊れたね』感想

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 森博嗣の小説『φは壊れたね』(2004年)を読み終えまして、その感想をまとめてみます。

 

 まず『φは壊れたね』、そして森博嗣について。

 D2大学院生、西之園萌絵(にしのそのもえ)、ふたたび事件に遭遇。密室の宙吊り死体!森ミステリィ新シリーズ!!

 おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が! 現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。タイトルは『Φ(ファイ)は壊れたね』。D2大学院生、西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追究する。森ミステリィ、新シリーズいよいよ開幕!!

(「講談社BOOK倶楽部・φは壊れたね」より引用)

森博嗣(もり・ひろし)

 1957年12月7日愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年、『すべてがFになる』 (講談社ノベルス)で第1回メフィスト賞を受賞し、ミステリィ作家としてデビュー。以後、犀川助教授・西之園萌絵のS&Mシリーズや、瀬在丸紅子たちのVシリーズ、『φは壊れたね』から始まるGシリーズ、『イナイ×イナイ』からのXシリーズなどを執筆。ほかに、 『女王の百年密室』『スカイ・クロラ』『喜嶋先生の静かな世界』などの小説や、『森博嗣ミステリィ工作室』『工作少年の日々』『つぶやきのクリーム』などのエッセイ、ささき すばる氏との絵本『悪戯王子と猫の物語』、庭園鉄道敷設レポート『庭園鉄道趣味 鉄道に乗れる庭』など多くの作品を発表し、人気を博している。

(「講談社BOOK倶楽部」より引用)

φは壊れたね』は森博嗣の最新ミステリィ「Gシリーズ」の第一作です。“G”の由来は明かされていませんが、各タイトルにギリシャ文字(Greek)が入るのでそう呼ばれています。

 

 個人的な話ですが、まず、森作品との出会いを書き綴ります。

 当時は大学3年生でした。活字慣れするために読書を始めたのですが、どういうカテゴリの本が自分に向いているかさえ分かりませんでした。そんな時に、理系の身だった自分に『すべてがFになる』を勧めてくれた人がいまして、なので読み始めました。思い返してみると2012年だったので、『ジグβは神ですか』(Gシリーズの8作目)が(新書で)刊行されるかどうかの時期だったかもしれません。

すべてがFになる』は衝撃的な面白さをもつ小説だったわけですが、それを含む「S&Mシリーズ」10冊、続編「Vシリーズ」10冊、『四季』4冊を合わせて24冊を読破しなければならない、そうしないとGシリーズを手に取る権利が持てない、と思い込んでいたことが懐かしいです。

「よくよく考えれば24冊なんて、2週に1冊を読めば1年もかからずに最新作に追いつけるじゃないか」ともいえるのですが、結果的に『φは壊れたね』を読み終えるのに4年もかかってしまいました。理由は「森ミステリィに読書エネルギーを全力投入するほどの勇気がなかった」に尽きます。読書を始めたばかりの頃は、他にもたくさん読みたい本があったわけです(今でも“積読”しています)。

 

 つまり『φは壊れたね』には、読了する前にもかかわらず感想が存在してしまいます。そのことをじつに上手く“解説”しているのが西尾維新です(文庫解説担当)。この解説は、西尾維新と『すべてがFになる』の出会いの話からはじまり、森博嗣をただひたすら畏れています。まるで教祖と信者の関係のようです。でもこれは森ファンの心情、ここまで脱落せずに著作を追い続けてきた矜持をよく表しています。実際、西尾維新ミステリィを書き続けて、そうでないものも書き出して、デビューして10年以上が経った今でも第一線で活躍しています。果てには「掟上今日子の密室講義」(『掟上今日子の挑戦状』[2015年]収録)で、『密室』というキーワードを整理してしまいます。

 

 ネタバレは(極力)避けますが、『φは壊れたね』において、密室は破られるものの、犯人の動機や、その後の結末は謎のままです。なので読者は勝手に想像するか、悪く言えば投げやりな結末を迎えるのですが、いざ感想を語ろうとすると、それはいつしか『φは壊れたね』オンリーではなく、他のシリーズや、さらには自分自身や作家までも巻き込んで、言い及んでしまいます。ずっと続いてきたシリーズなので個別に述べるのが難しい、という点もありますが、この現象そのものが森博嗣の魔力だと思います。森ワールドはまだまだ続き、その中で自分自身の歩みも進んでゆきます。

 

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