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AYUTANINATUYA

20代の工場作業員だってこんなことを考えている

オタクの殻を破ろう!/映画『海月姫』感想

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 邦画『海月姫』(2014)を見まして、感想を綴ろうかと思います。

 

 まず当映画のあらすじについて。

 人生において男は不要だと考えるオタ女子集団「尼~ず」の面々が集まる、男子は立ち入り禁止のアパート天水館。そこに暮らすクラゲオタクの月海(能年玲奈)は、熱帯魚ショップでひと悶着(もんちゃく)あったところをファッショナブルな女性に助けてもらう。次の日の朝、ひょんなことから彼女が女装をしていた蔵之介(菅田将暉)という男性だとわかって驚がくする。それを機に、蔵之介は男性であることを秘密にし天水館に出入りする。月海たちと蔵之介が交流を深める中、天水館の取り壊しが決まってしまう。

(シネマトィデイより引用)

 東村アキコによる同名漫画が原作の恋愛映画です。能年玲奈が演じるオタク女子・月海が女装男性・蔵之介と出会い、そこから様々な事件が起こってゆく、というファッション・ラブコメディです。

 

 まず映画を見る前に「オタク女子がイケメン男子と出会って恋に落ち、女性として目覚める苦悩を体験しながらも成長してゆく」みたいなストーリーラインを想像していました。でも実際には、それほど積極的に恋愛する・キスする・拒絶するといったシーンはありませんし、正直いって恋愛要素は薄いです。

 それと蔵之介のキャラクターが素晴らしいです。まず単純に、女装が似合っています。また蔵之介と月海との距離感が付かず離れずのちょうどいい感覚で、安心してみることができます。

 

 この映画のメッセージは「オタクの殻を破ろう!」ともいえまして、物語内で月海は徐々に、今までできなかったことに立ち向かうようになってゆきます。でもその動機は、蔵之介のためでも、同居人のためでも、自分自身のためでもなく、ごく自然に変わってゆくところが印象的でした。

 ところで月海の住むアパートには売れっ子BL漫画家・目白が住んでいまして、月海を含む他の住人から崇められているのですが、その彼女(彼?)から明確なメッセージを受け取らないところがまた良かったです。月海が目白に相談して、目白自身の過去のエピソードを交えたアドヴァイスをもらって月海が変わってゆくとしたら、それは月海の自由な意思ではなくて、誰かの価値観の押しつけになってしまうところでした。映画の中で目白についてはほとんど明かされず、「あの人は何だったんだ?」という疑問は残りますが、むしろ語られないことが他の多くに意味を与えていると思います。

 

 映画の演出については、かなりの低予算だったようであり、どこか映像に違和感を覚えるシーンが多く、いくらコメディといえどもリアリティに欠け過ぎている面はあります。音楽は前山田健一ヒャダイン)が、劇中歌・主題歌はSEKAI NO OWARIが担当しており、テクノポップと竜宮城やファッションの雰囲気が上手く合わさっていました。

 

 能年玲奈菅田将暉の配役がマッチしており、またジェンダーの観点から見ても面白みがあります。コメディ色がちょっと強めだったり、一方で物語の落としどころも理解しづらかったり、色々と惜しい点はあるものの、何となく敬遠して手に取らないのは損です。奥手の人にはぜひ見てほしいです。

 

海月姫

海月姫