AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

小説『三体Ⅱ 黒暗森林』書評感想

 

f:id:ayutani728:20200624224856j:plain

 今回は小説『三体Ⅱ 黒暗森林』を紹介します。劉慈欣による著作であり、翻訳は大森望、立原透耶、上原かおりが担当しています。2020年6月18日に早川書房から発売されました。

 

 

あらすじ 

待望の第二章、いよいよ登場。地球vs三体の戦いが始まる。
葉文潔をリーダーに戴いた地球三体協会の瓦解により、地球は三体文明により侵略の危機的状況にあることが判明した。人類は、人類文明最後の希望となる「面壁者」を立てて立ち向かうことを決断する――! 13万部を突破した『三体』待望の第二部、ついに刊行!

www.hayakawa-online.co.jp

 

ポイント

  • 面壁者
  • 羅輯
  • 黒暗森林

 

面壁者

 第一部にて地球に到来した「智子」という陽子サイズのスーパーコンピュータにより、地球の基礎物理研究は妨害され、かつ全体に監視ネットワークが築かれる事態となってしまいました。それに対抗するため、人類は「面壁者」(ウォールフェイサー)を選定します。これは智子が人の心までは読むことができないことを利用し、選定者が独りで三体文明への対抗策を練り、社会はそのための強大な権限や膨大なリソースを割り当てる計画のことです。作中では4人の面壁者が選定され、それぞれがどのような方法でもって三体文明に立ち向かってゆくのかに注目が集まります。

 

羅輯

 羅輯は本書の主な語り部を務める大学教授です。彼は面壁者に任命されますが、その責任の大きさから逃避し、北欧の湖畔で理想の女性と優雅な生活を営み始めます。しかし突如として妻と娘には出て行かれてしまい、また面壁者に対する世間の批判も強まってきたことから、冬眠技術によって約200年後まで眠ります。
 冬眠から目覚めた後、彼は地球文明の様々な技術革新に驚きつつ、数多く建造された宇宙船と三体文明との戦いを見守ります。羅輯の面壁者としての戦略は何なのか? そして彼は幸せになれるのかが読みどころとなっています。

 

黒暗森林

 羅輯が冬眠から目覚めた約200年後の世界は、都市が丸ごと地下に移され、人々は太い幹が何本も繁る森林の中で暮らしていました。地上は冬眠中の経済崩壊と環境破壊によって砂漠化していましたが、羅輯のような冬眠者にとっては地下よりも好んで居住する地になっていました。
 三体文明と地球艦隊との戦いが繰り広げられた後、ついに羅輯は「黒暗森林理論」に基づいた作戦により三体と対決します。

 

ネタバレ(結末・オチ)

「黒暗森林理論」とは、2つの宇宙文明が互いの存在を確認した時、和平や沈黙ではなく相手の文明を攻撃するのが最も賢明な選択肢である、というものである。
 黒暗森林理論を用いて羅輯は三体文明を脅迫し、三体側は羅輯を要求を飲み込む。地球滅亡の危機は去り、羅輯は平穏な日々を取り戻す。

 

終わりに

 第一章と比べてSFさはやや控えめになり、サスペンスやヒューマンドラマといったエンターテインメント小説らしくなった印象です。
 宇宙規模のスケールで物語が繰り広げられますが、三体との戦争が刻々と迫り来る中で実働的な描写が多くなり、ストーリーが分かりやすくなっています。その中で地球人の様々な思惑や面壁者の数々の戦略があり、話がどうなってゆくのか予想がつきません。また途中の冬眠期間を経ることで煩雑な作業時間をスキップして、常に新鮮な世界が体験できます。そしてついに三体文明と地球艦隊との戦闘が行われ、その圧倒的なスケールを目の当たりにします。
 一方、第一章で登場した葉文潔や第二章の羅輯の妻である荘顔については、彼女たちの思考や行動の描写不足を感じ、この辺りにスッキリしない印象を受けます。
 終わり方はとてもあっさりしていますが、ここからどう第三章につながるのか気になってしょうがないのが『三体Ⅱ 黒暗森林』です。

 

 

三体2 黒暗森林 上

三体2 黒暗森林 上

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本