AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

ライトノベル『ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングⅡ』書評感想

 

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 今回はライトノベル『ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングⅡ』を紹介します。川原礫による著作であり、2019年12月10日に電撃文庫から発売されました。

 

 

あらすじ

謎に満ちた新世界《ユナイタル・リング》での冒険、第二幕開演!
キリトとアスナ、アリスが謎のVRMMOゲーム《ユナイタル・リング》に強制コンバートされたその頃。シノンもまた同じ世界に招き入れられていた。「私としたことが、こんな状況に追い込まれるなんて……」数々のミスの末に、仲間も装備もなく、《サースト(渇き)ポイント》も残りわずかの窮地に追い込まれたシノンは、生存を懸けてボスモンスターとの戦いに挑む。一方、キリトたちもまた、ホーム防衛とシノン探索の二手に分かれて行動を起こしていた。だが行く手には、過酷な自然現象と強大なモンスター、そしてキリトたちを狙う襲撃者の影が――。

www.kadokawa.co.jp

 VR(ヴァーチャル・リアリティ)をはじめとした近未来技術とゲームとを融合させた世界観での冒険を描き、アニメとしての人気も高いシリーズの新章第2巻です。
 突如として始まったサバイバルゲーム、前巻にてなんとかチュートリアルをくぐり抜けたものの、仲間との合流や拠点の充実はこれからといったところ。キリトくんが冒険して、やることリストの消化に勤しむ本巻です。

 キリトの友人であり銃器を得意に扱うシノンが本作の第2の主人公といってもいいほどメインで活躍します。
 物語は彼女がログインするGGO(ガンゲイル・オンライン)が「ユナイタル・リング」に変貌する場面から始まります。キリトたちと同じく、システムの変更、装備重量オーバー、そして喉の渇きに悩まされますが、水場付近の恐竜をなんとか討伐し、事なきを得ます。
 キリトたちは現実世界でのミーティング、および「ユナイタル・リング」内での”やることリスト”の山積みを鑑みて、まずはシノンとの合流を果たすために遠征を計画します。ゲームの世界観やシステムを深堀りしつつ、遠征先の平原で雹の嵐から避難して、やがてシノンの居る洞窟まで辿り着きます。
 キリトの合流時、シノンは巨大なカエルボスモンスターと戦闘中であり、苦戦しつつも機転を利かせてこれを撃破し、ようやく再会を果たします。そしてキリトの拠点に戻ると、今度はアスナやアリスが集団プレイヤーからログアウスを防衛しているシーンでした。これも野生モンスターとの乱戦に持ち込むことでなんとか全員生存で切り抜け、ログハウスだけでなく町を作ることで防衛拠点を守ることにするキリトたち。そしてその基礎を作った翌日、現実世界にて約束のケーキ店で重要人物である菊岡誠二郎との再会を果たすところで幕引きです。

 

感想・考察

 クラフトゲームとしてやっていることは第21巻『ユナイタル・リングI』と同じなので、あまり面白くないです。ただそれと違って各々が武器を手に取り始めたこともあり、MMORPGらしい集団戦が描かれているところに懐かしさを覚えます。

 シノンが初めて登場したGGO編では、彼女はすでにそのゲームでの上位層に居て、キリトの誘いでALOを始めたときも仲間のサポートがあったのですが、「ユナイタル・リング」編では相棒の対物ライフル「ヘカートⅡ」も満足に扱えなくなり、彼女の”ニューゲーム”が見られるのが本作の魅力です。ただ結局は最初のボスモンスターである恐竜を、理由を付けつつもヘカートで撃ち抜いてしまうのは、彼女のゲームプレイヤーとしてのセンスよりも「ヘカートが強い」という印象が際立ってしまったのが惜しい部分だったと思います。

 中盤の洞窟での対カエル戦や終盤の拠点での対プレイヤー集団戦は、結局は「ユナイタル・リング」の世界観やシステムを深めたり今後の伏線を張り巡らせたりといったことに組み込まれているだけという感じです。『ユナイタル・リングI』では勘違いしてしまいましたが、このゲームの目的は生き残ることではなく《極光の指し示す地》への到達のようです。生存目標という受け身的なものならまだしも、地点到達という攻めの姿勢が求められる事柄に対して、本格的な拠点を敷いてしまう行為は、ゆくゆくの外へ冒険に出向く推進力を削いでしまう気がします。遊牧民のような移動式の拠点作りを目指したほうがよかったと思います。やがて目的地が明らかになってゆくと考えられますが、その場所と拠点との移動にどう整合性を持たせるのか、注目してゆきたいところです。

 

終わりに

 物語の進行度が低く、SAOシリーズに登場するキャラクターの魅力とサバイバルゲームの謎でなんとかつないでいる、という印象の『ユナイタル・リングII』でした。第5部全体としても、ラスボスが不明で、そこへ至る手段も持ち合わせておらず、新キャラクターとの絡みもほとんどないことから、大枠のストーリーの20%以下の展開だと考えます。次巻でのブーストに期待したいですね。