AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

ライトノベル『ソードアート・オンライン21 ユナイタル・リングI』感想

 

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 今回はライトノベル『ソードアート・オンライン21 ユナイタル・リングI』を紹介します。川原礫による著作であり、2018年12月7日に電撃文庫から発売されました。

 

 

あらすじ

 

サバイバルMMO《ユナイタル・リング》にキリトとアスナ、アリスが挑む!
キリトとアスナが《アンダーワールド》から帰還して1カ月。二人の傍らには、現実世界で実体を得たアリスの姿があった。しかしその平穏は突如破られる。「…………レベル1…………」「わたしもレベル1になってる!」
3人が突如巻き込まれた謎のゲーム、《ユナイタル・リング》。それは《ザ・シード》プログラムで構築された全てのVRMMOが融合した《サバイバルMMO》だった。キリトは開幕早々、愛用の装備をすべて失い、パンツ一枚を残すだけとなってしまう。絶体絶命の過酷な状況下、謎に包まれた《VRMMOSVG》に、キリトが挑む――!

www.kadokawa.co.jp

 VR(ヴァーチャル・リアリティ)をはじめとした近未来技術とゲームとを融合させた世界観での冒険を描き、アニメとしての人気も高いシリーズの新章第1巻です。
 今回のテーマはサバイバルゲーム。突如として強制的にシステムやルールの変わったオープンワールドを舞台として、主人公キリトたちのクラフト生活が始まります。

 物語の始まりは、いつものようにVRMMOゲーム・ALO(アルヴヘイム・オンライン)にログインして過ごしていたところ、なんの前触れもなくフィールドが落下し始め、拠点としていたログハウスが損傷してしまいます。キリトたちはゲーム内容の変更に戸惑いながらも、状況を受け入れてゆき、またログハウスの修復に大量の素材アイテムが必要だと理解します。
 まずは安全を確保するため、ログハウスの修繕および素材集めに取りかかるキリトたち。木材そのままでは必要素材に合致しないため、石からナイフを作製し、それから木材を加工し、途中で野生モンスターの乱入がありつつも撃退し、やがて鉄素材の入手と加工のステップに進みます。
 その際、別のパーティチームと遭遇し、取引の末にキリトたちはゲームの攻略情報を受け取る代わりに食事を提供します。しかし去り際にキリトは不意打ちを受け、人数・状況的に不利だったところを鍛冶屋のリズベットが駆けつけて鉄装備を作製し、敵パーティを一掃して一件落着、という流れです。

 

感想・考察

 新章開始ということで説明的な描写が多く、今までの戦闘系ゲームとは雰囲気がかなり変わっていて、正直いって受け入れづらい内容です。
「ユナイタル・リング」は『マインクラフト』や『ドラゴンクエストビルダーズ』や『Ark: Survival Evolved』をごちゃ混ぜにしたサバイバルゲームで、とにかく長く生き延びることがゲームの目的のようです。ゆくゆくは強豪パーティや、キリトとアスナの生き残りを賭けた戦いが描かれるのでしょうか? あるいはとてつもなく強力なボスモンスターが登場し、それを倒さないと全プレイヤーが焼き払われてゲームオーバー、なのでキリトくんが討伐しに行く、といった古風『ドラゴンクエスト』なのか、未だ全容は分かりません。

 SAOシリーズは、まずゲームそのものの面白さ、そしてキリトたちの冒険や掛け合いを楽しむために読んでいる側面もありますが、主として「ゲームでのリアリティ」を描いてきたという印象です。「ユナイタル・リング」がどういったテーマなのかまだよく見えませんが、率直に「ゲームと生活」を描くことに挑戦していると予想します。「ユナイタル・リング」ではログアウトしている間もゲーム内にアバターが残り続け、それゆえに学生や社会人は不利、という(当たり前な)描写があります。しかしそれゆえに、ゲームの合間に取る食事や身の回りの世話をしてくれる家族といった、何気ない日常のありがたみが逆説的に浮かび上がってくると考えられます。SAOとしてはずいぶん地味なテーマですが、キリトくんももうすぐ18歳ということで、そろそろ地に足つけてもよいかと思います。

「ユナイタル・リングI」のキャラクターの読みどころとしては、途中からキリトくんがパンツ1枚で各イベントを攻略してゆくシュールさと、アリシゼーション編で初めて出会ったときの無敵感はどこへ行ったのか、仲間になりつつ大幅ナーフ(弱体化)を受けたアリスのコミカルな感じが面白いだけです。シノンは登場せず、新キャラクターも最後に少し登場するだけです。シリカやリズベットが結構活躍することから古き懐かしきSAOの雰囲気はありますが、それが味わいたいなら過去の短編集の方が優れているので評価点には至りません。

 

終わりに

 それにしても、前巻にてアンダーワールド事件を解決して、仮想世界の中とはいえ200年過ごしてポストヒューマン化したキリトくんが、未だ一般学生として夏休みを過ごしつつ宿題に勤しむ、という状況に違和感を覚えてしまいます。キリトくんにもスポンサーが付いて支援してもらったり、それこそ作中のベンチャー企業「ラース」に就職したりする方が状況が落ち着きそうではありますが、未だにゲーム攻略が止められない様子です。新章も楽しみですね。