AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

ライトノベル『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (13)』感想

 

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 渡航によるライトノベルやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (13)』を読み終えまして、感想を綴ります。

 

あらすじ

エンドロールが流れる前に
暦は雪解けの季節を迎えるが、新しい希望の芽吹きはまだ遠く感じられる3月。それぞれの想いを言葉にし、行動しようとする雪乃、結衣、八幡。そして、それは今のままの関係でいることを終わらせることでもあって――。
雪ノ下雪乃は、最後まで見届けて欲しいと願った。由比ヶ浜結衣は、このままずっと一緒にいられたらと祈った。美しい夕日に時が止まればと願っても、落日を迎えなければ新しい日はやってこない。前に進むために諦めること、終止符を打つこと。悩むまもなく、巻き戻すことも出来ず、エンドロールは流れ始める……。
小学館より引用)

www.shogakukan.co.jp

 俺ガイルシリーズの最新巻です。第11巻が発売されて(2015/6/24)から約2年振り(2017/9/19)に第12巻、そして本巻(第13巻)はさらに約1年振り(2018/11/20)の発刊となっています。表紙は第11巻以来の由比ヶ浜結衣です。
 内容は11巻の終わり、雪ノ下の依頼を聞いてほしいというところから始まります。簡単にまとめると「自立したい」ということです。そして第12巻では一色いろはがプロムナード(舞踏会)をやりたがり、それに比企谷や雪ノ下たち奉仕部が付き合うものの、雪ノ下陽乃に奉仕部は”共依存”と指摘されます。第13巻では「共依存を脱しつつプロムを実行するためにどうすべきか?」に応えるべく、新たに行動を起こす様が比企谷および各々の視点から描かれます。
 結局、完結しません。落ち着く気配さえ見えないので、本巻までの進行度は最終章の4割くらいだと想います。

 

感想

 第12巻の感想で「この巻だけでは意味がありません」と書いたのですが、第13巻でもそのまま同じことを抱かずにいられません。
 比企谷の視点から見ると、雪ノ下がプロムを自力でやりたがる意味(”共依存”からの脱却と自立)は明らかに分っているものの、それを直接には助けず、プロムの当て馬案を作ることで雪ノ下たちの案を通そうとします。仮に比企谷案が却下される代わりに雪ノ下案が通ってプロムが無事行われても、絶対に雪ノ下は傷付きますし、そういった”結果の後の結果”を比企谷も予想できているのが読み取れます。ですが彼は、いつも通りのひねくれ加減と自己犠牲で最高の行動を取らない、この部分にイライラします。
 最後には、奉仕部の約束である「負けた方が勝った方の言うことを聞く」について、あっさり比企谷が負け、雪ノ下が勝ちます。そして雪ノ下の願いは「由比ヶ浜さんのお願いを叶えてあげて」とのことでした。このたらい回しな受け答えにも曖昧な感じが残ります。ところで「俺ガイル」を読んでいると、高校生男子1人女子2人のグループが形成されるのも疑問ではありますが、このような生殺与奪の場面で他人に譲るという行動を取れるものなのか、考えてしまいます。「フィクションだから」といえばそれまでなのですが、青春群像劇という枠組みを超えて、人の利己性・利他性を深く描いていると感じます。高校生の頃や、もしかしたら今の自らの自立心と比較しても比企谷や雪ノ下は自分の考えを持っているので、そもそも”共依存”になんて陥らないのでは、とも思うのですが。
 パロディも往年の鋭さがしっかり発揮されていて、出版の2018年のネタを締めくくるような演出がなされています。また最終章らしく、これまでの巻で大小に登場してきたキャラクターも勢揃いといった雰囲気なのは読んでいて楽しかったです。

 読んでいて、筆の”ノリ”の悪さがひしひしと伝わってきて、次巻14巻が出版されるのはかなり先になりそうです(もちろん次巻発刊予定もない)。第13巻自体も刊行ペースが空いたことを考慮しての前巻までのあらすじをまとめてくれている部分もあるので、今すぐ読む必要はまったくありません。むしろ何かの書籍セール期間や、第14巻が発売される直前に購入して読破すれば、間違うはずがありません。