AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

地上波放送・映画『君の名は。』感想

 

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 2018年1月3日にテレビ朝日系列にて地上波初放送されていた映画『君の名は。』の覚え書きです。

 

映画『君の名は。』あらすじ

秒速5センチメートル』(07年)、『言の葉の庭』(13年)など意欲的な作品を数多く作り出してきた気鋭のアニメーション映画監督・新海誠
 精緻な風景描写とすれ違う男女の物語を、美しい色彩と繊細な言葉によって紡ぎ出す“新海ワールド”は、世代や業界、国内外を問わず人々に大きな刺激と影響をおよぼしてきた。新海誠監督の待望の新作となる『君の名は。』は、夢の中で“入れ替わる”少年と少女の恋と奇跡の物語。世界の違う二人の隔たりと繋がりから生まれる「距離」のドラマを圧倒的な映像美とスケールで描き出す。
 作画監督を務めるのは『千と千尋の神隠し』(01年)など数多くのスタジオジブリ作品を手掛けた、アニメーション界のレジェンド、安藤雅司。また、『心が叫びたがってるんだ。』(15年)などで新時代を代表するアニメーターとなった田中将賀をキャラクターデザインに迎えるなど、日本最高峰のスタッフがスタジオに集結した。
 そして、主題歌を含む音楽は、その唯一無二の世界観と旋律で熱狂的な支持を集めるロックバンド・RADWIMPSが担当する。
 声の出演として、三葉が夢の中で見た男の子・瀧役に同世代の中でひときわ異彩を放つ演技派俳優、神木隆之介。また、自らの運命に翻弄されていくヒロイン・三葉役を、オーディションでその役を射止めた上白石萌音。更には長澤まさみ市原悦子ほかアニメーションと実写の垣根を越えたまさに豪華キャスティングが実現した。
 誰もが経験したことのない、アニメーションの新領域。新たな“不朽の名作”が誕生する!
(映画『君の名は。』公式サイト・イントロダクションより引用)

www.kiminona.com

君の名は。』のBlu-ray Discを持っているので、正直なところ地上波で観る必要はなかったのですが、SNSをはじめとした様々なコメントと併せてみることで、同時代的でリアルタイムな感じが湧き出てきてとても楽しい放送でした。
君の名は。』についての解説・考察は、優れたページが劇場公開時(2016年)にいくつも作られているのでそちらを参照ください。そしてここでは、少し本筋から外れるかもしれませんが、”2018年”という時代から見た『君の名は。』を語ろうかと思います。

 暴論だと分かっているのですが、『君の名は。』より大きな若者映画ムーブメントは今後20年近く起こらないのではないかと思います。
 そもそも、若者が減っています。少子高齢化です。仮に『君の名は。』と同じくらいクオリティの高い映画が作られたとしても、それを観る人・感想を発信する人の絶対数が少なくなるわけですから、結果的に大ヒットというのは生まれにくいと考えられます。もちろん、未来のことは誰にもわかりません。世界的に見れば人口は増加の一途を辿っていますし、『アナと雪の女王』のように海外での人気をトリガーとして日本でも火のつく可能性はあります。今ではTwitterをはじめとするSNSが盛んですが、近い将来にはそれ以上に人と人がつながりやすくなり、そのメッセージの”質”が増すことも考えられるので、ゆえに優れた作品がより評価される、という図式もあるでしょう。
 しかしながら『君の名は。』のような日本的純度が高く、かつそのヒットを皮切りに他の新海誠作品や出演陣にスポットライトが当てられる、といった波及効果まで期待できるようなコンテンツを想像するのは難しいです。

 そもそも『君の名は。』で主人公の瀧と三葉の入れ替わりの発端は、三葉が東京に憧れたからです。日本は近い将来、主要都市以外では大きな収入は見込みにくいですし、経済的・地域的支援も受けにくくなってゆきます。ゆえに子供がより生まれにくく、三葉のような「都会に憧れる高校生」という存在がなくなってゆくでしょう。確かに入れ替わりのはじまりは『君の名は。』の主題とはあまり関係ないですし、ファンタジーゆえにその幕開けの仕方はいくらでも変更できます。でもやはり「憧れ」をはじめとしたステレオタイプが土台としてあったからこそ、それを揺さぶったりひっくり返したりする面白さが生まれてくるわけです。『君の名は。』封切の2016年から2020年くらいまでは感性の共有容易だと思いますが、それ以降は多様化により、若者の内々の感覚を汲み取ったり突き動かしたりするのはハードルが高くなると考えられます。

 

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(個人的な願望も含まれるのかもしれないが)三葉の東京への憧れは今もまだ多くの人が抱いているでしょうし、それは2020年の東京オリンピックの頃に極大値を迎えると思います。五輪と直接には関係ないのかもしれませんが、最近では東京の魅力を再確認し、2020年の東京オリンピックの成功につなげよう、という雰囲気の広告も見受けられます。2020年オリンピック(第32回夏季オリンピック)の開催都市が東京に決まったのは2013年のことなので、『君の名は。』の製作期間中にもオリンピックに関係した都市変化はありました。ひょっとしたら「東京」という都市そのものが製作の意図の中に入っているかもしれません(新海誠監督が特に背景にこだわるタイプであり、作中では瀧も建設業界を志望していたから)。
 当然ながら時代は進んでゆくわけですが、そんな中で『君の名は。』は映画史上に残る大ヒット作であり、昭和・平成と受け継がれてきた日本人的感覚のモニュメントであり、そして東京という、都市やその周りの生活を収めた資料という役割も担っている、と考えてしまいました。
 劇場で観た人、DVDやBlu-ray Discを借りて観た人、今回の地上波放送で初めて観た人など、状況は様々でしょうけれど、それでもまだ見ていない人は一定割合で居るのではないでしょうか? 『君の名は。』を楽しむにはまだ間に合います。ぜひ観てください。