AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』感想

 

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 映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』を観まして、感想を綴ります(ネタバレを含みます)。

 

映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』あらすじ

 夏休みの登校日。中学生の典道と祐介は、なずなの前で競泳対決をすることに。典道は、競争のさなかに水中で不思議な玉を見つける。一方祐介は競争に勝ち、なずなに花火大会に誘われる。放課後、皆が打ち上げ花火のことで盛り上がっている中、なずなが母の再婚に悩んでいることを知る典道。どうすることもできない自分に典道はもどかしさを感じ、ふいに玉を投げると、なぜか競泳対決の最中に戻っていた。
シネマトゥデイ・あらすじより引用)
https://www.cinematoday.jp/movie/T0021649

 1993年に岩井俊二監督によって制作されたテレビドラマ、さらには1995年公開の実写映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』が2017年に劇場アニメとして蘇りました。
 アニメーション制作:シャフト、監督:新房昭之、脚本:大根仁、キャラクターデザイン:渡辺明夫、製作総指揮:川村元気・古澤佳寛、音楽:神前暁、及川なずな役:広瀬すず、島田典道:菅田将暉、主題歌:DAOKO×米津玄師『打上花火』、となっています。

 

感想

 話が難しいです。美少女ながらも転校を控える及川なずなと、彼女に淡い恋心を抱く島田典道の一夏の駆け落ちの物語であり、群像劇や青春の切なさがタイムスリップを通じて描かれています。しかしながら、作中ではタイムスリップのシーンが計3回あり、その展開の早さ、そして原理説明のなさ、さらには物語の着地点が曖昧なためにどうしようもない感じがあります。
 タイムスリップをしたことで、どこまで巻き戻ったのかを伝えるために同じシーンを繰り返していますが、その演出がやや冗長だと思います。初回のタイムスリップ時の再現は必要だとしても、以降はよりコンパクトな演出に留めて、タイムスリップの仕組みについて言及する時間を長く取った方がよかったと思います。
 実写版とは別物のストーリーといっていいです。 自分は事前に実写映画とノベライズで内容を知っていましたが、初見でストーリーについて行くのは大変だと思います。

 映像面では制作会社であるシャフトの挑戦を感じました。当会社ではこれまで『ef - a tale of memories.』、『化物語』、『魔法少女まどか☆マギカ』などを制作してきましたが、どちらかといえば普段からアニメを見る人に向けた映像を作ってきました。しかしながら『打ち上げ花火』ではより一般向けの映像を追求し、新しく生まれ変わろうというチャレンジ精神が宿っていると思います。
 作中ではタイムスリップによって空間が歪んでしまいますが、その状況を無風景でもなく、グロテスクな雰囲気でもなく、それとなくなにかおかしなことが起こっていると伝えています。ヒロイン・なずなの最初は口数が少なめなのですが、それでも表情の微妙な喜怒哀楽で魅力的なキャラクターになっています。特に1回目のタイムスリップの後、水泳の競争に勝った典道に水を掛けるなずなの笑顔はとても眩しかったです。演出についても、実写版『打ち上げ花火』や岩井俊二を強く意識した雰囲気が窺えました。それでいてシャフトらしさ、新房監督らしさも感じました。
 作中ではプールや浜辺と水際のシーンが多くあり、その表現がよかったです。それとタイムスリップで時間が巻き戻ってゆくシーンは迫力がありました。しかし映画冒頭であからさまなCGで風車が回っていたり、男子たちが自転車で通学していたりするなど、CGに慣れていない人には違和感があるかもしれません。

 

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 配役について、なずな役の広瀬すずはかなりうまくやっていると思います。最初はミステリアスで、小悪魔的で、話が進むにつれて徐々に心を開いてゆく感じがとてもよかったです。一方で典道を演じる菅田将暉は棒読みが多くてイマイチでした。不器用な中学生と読み取れなくもないですが、もう少し表現力があってほしかったです。その他のキャラクターでは典道と水泳競争をする祐介(宮野真守)が特によかったです。

 劇中の音楽について、なずな(広瀬すず)が歌う『瑠璃色の地球』(松田聖子のカバー)、挿入歌『Forever Friends』、主題歌『打上花火』のどれも素晴らしかったです。劇中音楽は控えめです。メインテーマだけで1分ぐらい通すシーンがあってもよかったかと思います。


 物語の最後に、“もしもの世界”をセカイ系のように語り始めます。さらにはタイムスリップを可能にする「もしも玉」が砕けて、様々な過去や未来が映し出されます。なずなと祐介が夏祭りを楽しむ“もしも”、なずなと典道が無事に駆け落ちする“もしも”たちです。そして切り替わった次は登校日の出席確認をするシーンで、なずなと典道は席に着いていない、という場面で終幕を迎えます。このラストの尻切れトンボな感じが残念でした。

 夏の青春らしさで溢れているので、若い世代は共感しやすいです。それでいてシャフトらしい凝った演出も盛り込まれていて、普段からアニメを見ている層も楽しめます。岩井俊二監督へのリスペクトにも溢れていて映画好きも満足できる内容で、特に実写版『打ち上げ花火』をリアルタイムで観ていた世代には、そのドラマと自らの青春の思い出が重なることでノスタルジーが得られると思います。確かに中途半端なところもありますが、なずなの美少女さは際立っています。

 

その他

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 公開2日目(2017/8/17(土)の夕方)に109シネマズ(名古屋市)で観ました。座席数250人程度の劇場が8割ほど埋まっていて、見たところ観客は10~20代がほとんど、30~40代がちらほらいる感じで、男女比は半々くらいでした。
 たまたま自分の隣に40代くらいのおじさんが座っていて、その人が鑑賞中に頭を抱えていました(ただ上映中にブツブツ独り言を呟くのはやめていただきたい)。人それぞれ、色々と思うところがあったのではないでしょうか。

 

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