AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

エンターテインメントとしてシンプルに楽しめる/映画『予告犯』感想

 

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 映画『予告犯』(2015)を見まして、感想を綴ります。

 

映画『予告犯 』

チェック:「ジャンプ改」で2011年から2013年にかけて連載されて人気を博した筒井哲也のコミックを実写化したサスペンス。法では裁けぬ悪や罪をネット上で暴露し、その対象への制裁を予告しては実行する謎の予告犯シンブンシとエリート捜査官の攻防が展開する。監督は『ゴールデンスランバー』、『白ゆき姫殺人事件』などの中村義洋。『脳男』などの生田斗真が、新聞紙製の頭巾を被った異様な主人公を怪演、その脇を戸田恵梨香鈴木亮平濱田岳荒川良々ら実力派が固める。息詰まるタッチに加え、社会のさまざまな闇に光を当てる硬派な視点にも注目。

ストーリー:インターネット上に、新聞紙製の頭巾にTシャツの男(生田斗真)が登場する動画が投稿され始める。彼は動画の中で、集団食中毒を起こしながらも誠意を見せない食品加工会社への放火を予告する。警視庁サイバー犯罪対策課の捜査官・吉野絵里香(戸田恵梨香)が捜査に着手するが、彼の予告通りに食品加工会社の工場に火が放たれる。それを契機に、予告犯=シンブンシによる予告動画の投稿とその内容の実行が繰り返される。やがて模倣犯が出没し、政治家殺害予告までもが飛び出すようになる。

シネマトゥデイより引用)

ジャンプ改』に連載されていた同名漫画の実写映画版です。率直に、サスペンス・ミステリ映画としてテンポがよく、分かりやすくてよかったです。監督は『ゴールデンスランバー』、『白雪姫殺人事件』などを手がけた中村義洋氏ということもあり、社会風刺的な一面も覗かせる中で、エンターテインメントとしてシンプルに楽しめる映画です。

『白雪妃殺人事件』でもそうだったのですが、Twitter的なSNS投稿が現実空間に浮かび上がって、それが連鎖的に広まってゆく様子を巧みに表現していると思いました。実際は一般人のネットのつぶやきなんてほとんど発言力を持たないですし、影響があったとしても、現状のSNS投稿は発言を直線的にしか追えません(実際の拡散は同心円状だったり、葉脈状だったりする)。それと、周囲の全員がSNSを上手く扱えるなんてありえません(誰もがデジタルネイティブなわけがない)。なのでそのシーンはあくまでも発言に対して抱いた心理的なイメージ、陰口や噂話に過剰反応する様子だと思うのですが、それが映像として見応えがありました。

 

『予告犯』は様々なキャラクターが登場しますが、中でも魅力的に映るのは、生田斗真の演じる主人公・予告犯=シンブンシ=ゲイツ=奥田です。彼は不幸な境遇を経た上に派遣社員も不当解雇されるという身であり、ネットの生放送を利用して社会批判をし、さらには法律で裁けない悪に対して“公開処刑”を行います。ここから「でも真意は……」という展開になって、「じつは予告犯は良い奴なのか?」という方向へ物語は流れてゆきます。でもどこか不安になる要素として、生田斗真の陰のある演技が見事です。本当は信じたいのだけれど、どこか暗げで、裏がありそうな絶妙の表情を作ります。その不安感が、物語の後出し的なエピソードの信頼度をいい具合に損なっています。

 

 映画の展開はしっかり筋が通るように作り込まれているのですが、1ヶ所だけ、なぜシンブンシたちが犯罪をネット中継するのかがよく分からなかったです。シンブンシは「犯罪がしたくて犯罪をしている」わけではなく、別の目的があります。

 ならば劇場型犯罪なんてせず、政治家を脅迫して騒ぎを起こす、誘拐した被害者を帰して供述させる、等々で十分だと思います。劇場型犯罪は確かに物語としての見栄えはいいですが、そこだけ個人的にかみ合いが悪くてスッキリしない終わり際でした。

 

 エンタメ映画として展開を次々に受け入れながら見るもよし、社会風刺として考えを巡らせながら見るもよし、生田斗真戸田恵梨香の演技に注視して見るもよし、もちろん、ヒューマンドラマとして感動もできる、万人受けの映画だと思います。

 


映画 「予告犯」  (通常版) [DVD]

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