AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

本音/映画『心が叫びたがってるんだ。』感想

 

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 映画『心が叫びたがってるんだ。』(2015年)を見まして、その感想をまとめてみます。

 

 まず『心が叫びたがってるんだ。』について。

 名曲と共に、描かれる物語。再び日本感動の渦に―。

 2013年、アニメファンの枠を超え、心揺さぶる感動作として興行収入10億円を突破する大ヒット記録した『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。テレビアニメオリジナル作品として歴代2位の記録を打ち立て、実写ドラマ化も決定するなど、今でも日本中に“あの花現象”を巻き起こしている。

 そして今秋、名実ともにヒットメーカーとなった監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀の3人が結集し、再び秩父を舞台にした完全オリジナルストーリーの青春群像劇『心が叫びたがってるんだ。』が誕生する。

 心の傷、葛藤、誰かを想う切なさ―。人と人との絆を描いた物語と、誰もが一度は聞いた事のある「悲愴」や「Over the Rainbow」「Around The World」などの名曲の数々が、きっとあなたの心を感動でいっぱいにしてくれる。

(映画『心が叫びたがってるんだ。』イントロダクションより引用)

 幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順。そして突然現れた“玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。

 高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。

 心の殻に閉じ込めてしまった素直な気持ち、本当は叫びたいんだ。

 担任の思惑によって、交流会の出し物はミュージカルに決定するが、クラスの誰も乗り気ではない様子。しかし拓実だけは、「もしかして歌いたかったりする?」と順の気持ちに気づいていたが、順は言い出せずにいた。

 そして、だんまり女にミュージカルなんて出来るはずがないと、揉める仲間たち。自分のせいで揉めてしまう姿を見て順は思わず「わたしは歌うよ!」と声に出していた。

 そして、発表会当日、心に閉じ込めた“伝えたかった本当の気持ち”を歌うと決めたはずの順だったが…。

(映画『心が叫びたがってるんだ。』ストーリーより引用)

 王道的な青春群像劇です。端的に、良作という感じです。舞台は埼玉県秩父市であり、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』とわずかな関係性を持ちながらも、基本的には映画内で完結する物語です。なおかつ特定の年代層やターゲットを絞った映画でもなく、(スタジオジブリ細田守作品とは別の路線で、)アニメ映画の幅を広げる作品だと思います。

 そして、アニメなのにそれらしくない、写実的でゆっくりとした雰囲気がとても好きです。また、喋れない主人公・成瀬の表情やジェスチャーは豊かで、主人公たち以外のいわゆるモブキャラにも動きや発言に魅力があり、舞台に狭苦しさを感じないです。

 あとは秩父市の背景がいいですね。ごく普通の田舎で、季節感もやや薄いのですが、とても繊細に作り込まれています。なので自らの周りの、リアルな景色までもが色鮮やかに映るようになりました。

 

 ストーリーはとても普遍的で、自分の思っていることを誰かに伝えることについて、思い悩んで、傷ついて、でも対話を通じて乗り越えてゆく、という内容です。

 自分もブログをやっている身なので、人並みに言葉とか、物事を伝えることに対して深く考えたことがありました。映画を見て、あったことを思い出しました。今もこうしてブログを書き続けていて、その動機は「ただ書きたい」なのですが、「やっぱり誰かに伝えたいのかな」と、思いました。つまりは相手ありきということで、相手が居なかったら何の価値もないですし、相手が居る状況を維持するために、色々な方策を巡らしてしがみつくのは本来の目的と少しズレているといいますか、「それって本当に伝えたいことを伝えられていないのではないか?」とも感じました。でもやっぱり、一方的に喋ったり書いたり伝えたりする人に関心を払う人なんてごく一部ですし、相手に多少なりとも依存するのは仕方ないことかな、と至りました。

 

 登場人物と年齢が近い中高生に見てほしいです。また、悩める中高生を抱える親世代にも推したいです。あとは、普段はアニメを見ない人、これからアニメをチェックしようかなと考えている人にもオススメです。そして特に、ミュージカルが好きな人にはうってつけの映画だと思います。