2016年4月から放送されていたアニメ『ジョーカー・ゲーム』(全12話)を見終えたので、感想をまとめてみます。
まず『ショーカー・ゲーム』について。
世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋、帝国陸軍の結城中佐によって、スパイ養成部門“D機関”が秘密裏に設立される。生え抜きの軍人を尊ぶ陸軍の風潮に反し、機関員として選ばれたのは、東京や京都といった一般の大学を卒業し、超人的な選抜試験を平然とくぐり抜けた若者たちだ。彼らは魔術師のごとき知略を持つ結城中佐のもと、爆薬や無電の扱い方、自動車や飛行機の操縦法はもちろん、スリや金庫破りの技に至るまで、スパイ活動に必要なありとあらゆる技術を身につけ、任地へと旅立っていく。
「死ぬな、殺すな」――
目立たぬことを旨とするスパイにとって自決と殺人は最悪の選択肢であるとするD機関は、陸軍中枢部から猛反発を受けつつも、味方を欺き、敵の裏をかき、世界中を暗躍する。
東京、上海、ロンドン……世界各地で繰り広げられるインテリジェンス・ミステリー。
(「TVアニメ『ジョーカー・ゲーム』公式サイト・INTRODUCTION」より引用)
柳広司による小説を元にした、短編ミステリー・スパイものです。
各話リストは以下の通りです。
第1話 ジョーカー・ゲーム(前編)
第2話 ジョーカー・ゲーム(後編)
第3話 誤算
第4話 魔都
第5話 ロビンソン
第6話 アジア・エクスプレス
第7話 暗号名ケルベロス
第8話 ダブル・ジョーカー(前編)
第9話 ダブル・ジョーカー(後編)
第10話 追跡
第11話 柩
第12話 XX ダブル・クロス
率直な感想は、良作というところです。
原作はチェックしていないのですが、サスペンスで大切な緊張感を、キャラクターの目線や陰影、セリフの強弱、ゆっくりとした動き、音楽、意味深なカットがうまく演出しています。作画も丁寧ですし、声優陣も豪華だといえます。
それと1~2話で舞台が変わるので、見ていて飽きません。上海・ロンドン・新京・船上・ドイツと、背景の作り込みもしっかりされています。それとアニメなので、外国人がほどよくデザインされており、日本語を喋っていることにも違和感がありません。ストーリーにすんなり入り込めます。
時代設定は昭和12年(1937年)~昭和14年(1941年)であり、年代相応の技術力です。軍利用の(オーバーテクノロジーな)戦闘機やコンピュータ、通信機器にセンサー類は作中に登場せず、純粋な知略サスペンスに仕立て上げられています。
しかし疑問だったのが、「およそ精神と肉体の極限を要求される訓練」を通過する者の原動力といいますか、「なぜスパイになったのか?」についてほとんど語られないところです。金? 名誉? スリル? 復讐? 愛国心? スパイという特性上、そういった説明は難しいのかもしれませんが、どうも深く踏み込んでくるエピソードが少なかったように思います。厳しくいえば、「見た後に何も残らない」といった感じです。
でもこの点に関してもサポートがありまして、それが「第12話 XX ダブル・クロス」です。この回は「第1~2話 ジョーカー・ゲーム」で登場した、(元?)軍人の佐久間が、彼から見たスパイを語ります。スパイ本人は沈黙したままですが、佐久間が語ることで間接的にスパイがどういう心境なのかが垣間見え、スリルの裏腹にある人間的な喪失が、しんみりとしたメッセージを残してゆきます。
少しインテリが過ぎる傾向もありますが、基本的に一般男性向けで、中でも普段はアニメを見ない人たちがよりはまってしまうアニメだと思います。原作の「D機関シリーズ」は数年単位で刊行されているのと、今期で描かれなかったエピソードも残っているようなので、次の新刊が出た際にアニメの第2期も作ってほしいですね。