AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

漫画『化物語(4)』感想

 

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 原作:西尾維新 漫画・漫画原作:大暮維人による漫画『化物語(4)』を読み終えまして、感想を綴ります。

 

あらすじ

「I LOVE YOU」「戦場ヶ原、蕩れ」ひたぎの想いを受け止め、八九寺真宵の一件も解決した阿良々木暦。全てが順調に前へと進み始めたかに見えた。突如現れた謎の雨合羽に、その身体をぶち抜かれるまでは…! 西尾維新×大暮維人で贈るこれぞ新たな怪異! 怪異! 怪異! 君に名を、呼んで欲しかった〈物語〉!
(講談社コミックプラスより引用)

kc.kodansha.co.jp

 小説『化物語(上)』の「するがモンキー」の前半が描かれています。新ヒロインの神原駿河が登場し、新たな怪異、そして新たな人間関係が紡ぎ出されています。

アニメ版と漫画版の違い

 この漫画版がアニメ版とどう異なるか、という点から話を進めてゆきます。
 アニメ版と漫画版の流れの違いを並べてみると、

  • アニメ版:阿良々木暦と八九寺の会話 ⇒ 神原の登場 ⇒ 戦場ヶ原家で勉強会 ⇒ 羽川との電話 ⇒ 猿の怪異との遭遇
  • 漫画版:阿良々木暦と八九寺の会話 ⇒ 猿の怪異との遭遇 ⇒ (回想にて)神原の登場 ⇒ 羽川との会話 ⇒ 戦場ヶ原家で勉強会 ⇒ 猿の怪異との戦闘続き

という構成になっており、尺としても猿の怪異との戦闘シーンが長くなっています。また、羽川もアニメでは電話であったのが、書店で参考書を購入するついでに会話をしている、というシーンに変更されており、絵的な動きと羽川の積極性が加わっています。

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 神原のキャラクターもやや変わっています。アニメ版の神原の髪型は短髪のストレートでしたが、漫画版ではややウェーブがかったボブカットになっており、また漫画版の神原はやや長身になっている印象です。性格面でも、アニメではスター性とは裏腹にフランクな感じでしたが、漫画版では加えてバスケットボール部やチームの和を尊ぶ”すごく良い奴”になっています。

感想

 漫画版はアニメ版のストーリーと変わらないのですが、各シーンの順番や細部が異なる点が、違和感はありつつも、新たな物語シリーズの世界を描こうとしているので、賛否が分かれそうです。
 また、神原の見た目も性格も(アニメ版と)変わっているところが、個人的には受け入れがたいです。百歩譲って容姿のイメチェンをするのはいいとしても、物語シリーズの登場人物たちは全員が強烈な個性によって成り立っており、それゆえに怪異に遭遇するのであって、漫画版神原のような協調性の高いキャラクターは暴力を振るう行動は取らない気がしてならないです。

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 そして、カットがいちいちエロティックです。元々の小説では、確かに字面ではきわどいシーンはありますが、それにも関わらず会話そのものは真面目である、というのが特徴でした。アニメ版でも各人物たちの身体はあまり描かずに会話のイメージを膨らます、という方法で不思議な意識のギャップを生じさせる、という内容でした。しかし漫画版では写実的になっていて、(当たり前といえばそれまでだが)漫画という枠組みに収まってしまっています。漫画というメディアや表現方法を超えてほしかったと、どうしても考えてしまいます。

まとめ

 多少のネタバレになりますが、アニメ版では後に阿良々木くんは猿の怪異と再戦する際に、最初の遭遇での経験を糧にしていますが、正直いってアニメ版のファーストコンタクトでは描写が少なすぎて”経験”と呼べる程度の中身が伴っておらず、ゆえに再戦時の話の基盤が弱くなってしまっています。一方、本巻では美麗な作画と奇抜な構図と十分な紙幅で存分に戦っているので、「するがモンキー」の結末はより重みを持てるのではないかと推察できます。