AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

2018年12月の読書リスト

 

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安部公房 砂の女 

 女は、素裸だったのだ。
 涙でにごった視界のなかに、女は影のように浮んで見えた。畳の上に、じかに仰向けになり、顔以外の全身をむきだしにして、くびれた張りのある下腹のあたりに、軽く左手をのせている。ふだん人が隠している部分は、そんなふうにむきだしにしているのに、逆に、誰もが露出をはばからない、顔の部分だけを、手拭で隠しているのだ。むろん、眼と呼吸器を砂から守るためだろうが、そのコントラストが、裸体の意味を、いっそうきわ立たせているようだった。
 しかも、その表面が、きめの細かい砂の被膜で、一面におおわれているのだ。砂は細部をかくし、女らしい曲線を誇張して、まるで砂で鍍金(めっき)された、彫像のように見えた。ふいに、舌の裏側から、ねばりけのある唾液が、ふきだしてくる。(本書51〜52ぺージ)
(新潮社より引用)

www.shinchosha.co.jp

 学校の先生が砂の穴に捕らえられて脱出を図る小説。名前は聞いたことあるけど読んだことのない安部公房でしたが、この一冊で世界観に取り込まれました。やや昭和チックな文体ではありますが、描写も会話劇も読みやすくてなおかつ深みもあり、なによりも私・女・砂・世界という4つの構造には現代の不条理にも感じ取れる共通性があります。形としては私小説なのにややSFチックなのと、主人公の趣味である昆虫標本の話が少しくどいところがあり、読んでいて疲れました。 

 

渡航 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(13)

エンドロールが流れる前に
暦は雪解けの季節を迎えるが、新しい希望の芽吹きはまだ遠く感じられる3月。
それぞれの想いを言葉にし、行動しようとする雪乃、結衣、八幡。そして、それは今のままの関係でいることを終わらせることでもあって――。
雪ノ下雪乃は、最後まで見届けて欲しいと願った。由比ヶ浜結衣は、このままずっと一緒にいられたらと祈った。美しい夕日に時が止まればと願っても、落日を迎えなければ新しい日はやってこない。前に進むために諦めること、終止符を打つこと。悩むまもなく、巻き戻すことも出来ず、エンドロールは流れ始める……。
(小学館より引用)

www.shogakukan.co.jp

 俺ガイルシリーズの最新巻です。第11巻が発売されて(2015/6/24)から約2年振り(2017/9/19)に第12巻、そして本巻(第13巻)はさらに約1年振り(2018/11/20)の発刊となっています。表紙は第11巻以来の由比ヶ浜結衣です。

ayutani728.hateblo.jp

 

川村元気 億男 

『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』の川村元気の本屋大賞ノミネート作、ついに文庫化! 宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―――。ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ……数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か? 「億男」になった一男にとっての幸せとは何か? 九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?
(文藝春秋BOOKSより引用)

books.bunshun.jp

 宝くじの当選金を盗まれた主人公が億万長者にインタビューしに行く小説。偉人や映画のお金にまつわる言葉の引用を読んでいるだけで”金言集”のように色々考えさせられます。また、多くの人を悩ませているお金の話はきっと面倒くさいはずなのに、当小説では軽妙なやりとりで読みやすく仕上がっています。作者のお金に対する考察本のようなもので、エンタメ小説として考えると結末が弱いです。

 

大暮維人 西尾維新 化物語(3) 

八九寺真宵。阿良々木暦が出会ったその小学生は、いつまでも目的地に辿り着けずにいる“蝸牛”の迷子だった。「コイツを無事に送り届けるのが、僕の役目だ」想いが風化し劣化してしまわぬうちに……。西尾維新×大暮維人で贈るこれぞ新たな怪異! 怪異! 怪異! 燦燦と、想い射しこむ〈物語〉!
(講談社コミッププラスより引用)

kc.kodansha.co.jp

 小説『化物語(上)』の「まよいマイマイ」後半から終わりまでを描く漫画単行本。当漫画を読んでいる多くの人は小説やアニメの「つばさキャット」や「猫物語」の体験から、羽川委員長がとても”魅力的”なキャラクターであることは知っているはずですが、「まよいマイマイ」までの描写ではそこまで気づけなかったのではないでしょうか。ですが、当巻ではそういった事後情報がなくても、羽川さんの魅力に気づいてしまうほど丁寧な描写が際立っています。また、時代に合わせて阿良々木くんたちはガラケーではなくスマホを使っていますが、物語の本筋は変わっていないところにストーリーの耐久力を感じます。一方、話の進行速度がやや遅めなのが気になります。

 

ダン・アリエリー 熊谷淳子 予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 

行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」――。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない! 行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫化。解説/大竹文雄・大阪大学教授
(Hayakawa Onlineより引用)

www.hayakawa-online.co.jp

 イグノーベル賞受賞者による行動経済学紹介本。ユーモアある文体で読みやすく、思い当たる事例も多くてためになりました。500ページ近い文庫本が電子書籍だと200円引きになり、本書の内容に対するコストパフォーマンスがとても優れています。

 

川原礫 ソードアート・オンライン17 アリシゼーション・アウェイクニング 

ついに現実世界のプレイヤーたちがアンダーワールドに到達し……! ――≪光の巫女≫アリス。――≪闇の軍勢≫すべてを犠牲にしてでも、我が手中に収める。
≪最終負荷実験≫二日目。整合騎士による命がけの奮闘により劣勢になった≪ダークテリトリー軍≫は、卑劣な手段で反抗を開始する。アンダーワールドを外部から観測していた米軍傭兵・クリッターが、現実世界の人間たちを最終決戦に投入する。全米のゲームコミュニティサイトで≪本格派VRMMOゲームのベータテスター募集≫と称し、騙してログインさせたプレイヤー数は、五万人を超えた。闇の軍勢の増援に、絶体絶命となる≪人界軍≫。スーパーアカウント・ステイシアでログインしたアスナ一人では到底太刀打ちできなかった。そこに、アンダーワールドで言い伝えられてきた創世の神々が舞い降りる。白く輝く太陽神ソルスと、優しく暖かい地母神テラリア。その二柱は、シノンとリーファの姿をしており……。
(電撃文庫より引用)

dengekibunko.jp

 キリトくんがダイブした人工知能たちの国で人間が戦争を始めるライトノベル。これまで登場してきたキャラクターが総出演してきて、ひたすらフラグ回収を行っているパートな印象です。エロとリョナな描写が多く、どうやってアニメ映像化するのか気になるところです。