AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

元号売ります ―公募命名権制度の検討―

 

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「元号はいくらするのだろう?」

 カレンダーを2019年に貼り替えている際に、こんなことを思いついた。
 この件を考えている時期(平成30年12月)において、平成の次の新元号はまだ公表されていないが、内閣府ではすでに決定している(はず)なので、つまるところ意味はないのだが、自身は暇つぶし程度には面白いと思い込んでおり、あるいは、いずれ来る次の改元の際に一考の価値を見出してもらう希望を抱いて、ここに書き残しておく。

 

 まず基礎知識として、元号改正には1979年の元号法に制定基準がある。

ア 国民の理想としてふさわしいよい意味を持つものであること。
イ 漢字2字であること。
ウ 書きやすいこと。
エ 読みやすいこと。
オ これまでの元号又はおくり名として用いられたものではないこと。
カ 俗用されているものではないこと。

www.digital.archives.go.jp

 各項目の意味を深堀りしてゆく。2017~2018年にかけて改元と、それに伴う新元号の予想に関する記事は多数投稿されているが、中でもクイズノック河村氏の「新元号を東大生がガチ予想してみた。」は高い分析を行っており、そちらを参考にすると以下のようになる。

ア 漢字そのものに良い意味がある
イ 漢字2字である(そのままの意味)
ウ 小学校低学年までに習う漢字
エ 小学校低学年までに習う漢字
オ 過去に使われていない元号であること
カ 熟語でないこと

https://quizknock.com/new-gengo/

【イ】~【オ】は比較的簡単であるが、【ア】と【オ】の基準を満たすのは難しい。そもそも漢字は意味を持てば熟語になり、そうでなければ言葉にならない特性がある。平成生まれの筆者には想像できないが、「平成」という元号が定められるまでその単語は存在しなかったらしい。省略したが【ア】は元々「国民の理想として」抱いているイメージを漢字化しなければならないのに、現時点の日本語にはそれが存在していないという矛盾を伴う作業、それが改元である。

 イメージが言語化に達していないならば、イメージを集めて言語化すればよい。公募という手段である。
 現行の参議院選挙は3年毎に実施されるので、「そろそろ改元が必要」というタイミングで元号の公募を同時に実施するのが効率的だと考えられる。投票は国民の義務であるが、投票後の元号応募は任意とする。元号応募率は選挙投票率を大きく下回る(2割程度?)だろうが、少数の有識者が決めることに比べればよほど民主主義らしくて”一般意志”的である。

 ただここで問題が起こる。煽動である。政治の世界では個人あるいは複数名により行われ、正しい意志決定を阻んできた過去がある。そして今回の公募も例外ではない。公募での多数決にするのか、公募である程度選定して最終決定は有識者に委ねるのか、どちらにしても煽動の可能性は残ってしまう。

 ゆえに応募者には他者に惑わされず、1人1人にしっかり考えてもらう必要がある。公募側がそれに適した環境を用意すべきである。
 どうするべきか。お金を賭けるべきである。

 公募という多数の意見が反映されるのとは対照的に、ごく少数の意見が全面に通るのが命名権(ネーミングライツ)制度である。それは一般的に、スポーツや文化施設の名称に企業名を付けて、命名側は宣伝効果を、被命名側は費用補填を目的とするものである。  

 仮に新元号を”そのまま”売り出せば、オルダス・ハクスリーの小説『すばらしい新世界』での「フォード紀元」のように「豊田元年」が誕生するなど、「国民の理想」とは程遠いものになる可能性が高くなってしまう。なので、”応募者がその元号に見合う金額を支払って応募する”システムにすればよいと考える。

 例えば、ある新元号の応募者数10,000,00人(100万人)が、(簡略化のため絞った)4つの新元号候補にそれぞれ以下の平均金額で応募したとする。

新元号  応募者数  平均金額  結果
 AA   400,000   500  200,000,000
 BB   200,000  1,200  200,000,000
 CC   100,000  1,400  140,000,000
 DD   300,000   900  270,000,000

 結果は<応募者数×平均金額>で決定し、この値が最も大きな候補を新元号と定める、とする。
 この手法の利点として、応募者は金銭を失うので、その対価に見合うだけ自らが好む候補を応募する可能性が期待できるところである。また、ある企業が応募会場入口で"買収"しようとしても、買収費用と応募費用が必要なため多額の負担になり、また応募者側から考えると、買収に乗るとみせかけて応募はせずに金銭を受領するか、買収のために渡された金銭で自らが好む候補を応募するのが適した選択となる部分である。
 もちろん欠点として、出資型応募のために十分な応募者が集まらない可能性がある、改元のために多額の経済損失が起こるなどが考えられる。元号という日本独自の文化的観点や、法律面での課題も残る。

 ただ、上手く制度化すれば元号という新しい時代を国民1人1人のものにすることができ、また政府としても改元に伴う費用を補填できる側面もある。繰り返しになるが、この案は平成の次の新元号には間に合わない。しかし、その次の時代にはよく考えてほしいと思っている。

付録 ―元号の適正価格―

 日本以外に元号制を採用しているのは台湾、韓国、中国、ベトナムなど東南アジアの一部であり、その内で元号を命名権などの経済活動により決定している国家は確認できなかった。

 ゆえに参考価格として以下のように述べる。

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「味の素スタジアム」は2003年に日本で初めて公共施設に命名権を導入し、2019年までの16年という契約期間は国内の大型公共施設として最長の期間となっているので、これを基準に議論を進めてゆく。
 この施設の契約期間および金額は以下の通りである。

【第1期】5年間(2003年3月1日〜2008年2月末日)で12億円(消費税等別途)
【第2期】6年間(2008年3月1日〜2014年2月末日)で14億円(消費税等別途)
【第3期】5年間(2014年3月1日〜2019年2月末日)で10億円(消費税等別途)
合計:16年間で36億円 平均:2億2500万円/年

 また沿革では、平成22年に来場者数1,000万人を達成、平成30年に同2,000万人達成とあるので、約8年で1,000万人が来場し、1年の来場者数は約1,250,000人であると計算できる。

 2017年における日本の総人口は126,710,000人なので、仮に、味の素スタジアムに来場するように全国民が元号を年に1回使用すると、225,000,000円/1,250,000人×126,710,000人=22,807,8000,000(228億円)という金額が浮かんでくる。これは日本における2017年度予算案(97兆4547億円)の0.023%に相当する

 一方、近代日本における元号とその年数は以下の通り。

元号 平均
明治 45年
大正 15年
昭和 64年
平成 30年

平均 38.5年

  ゆえに元号の契約期間は約40年とするのが適している。
 したがって、元号の総額は<1年あたりの命名権料>×<契約期間>とするのが妥当だと考えられるが、日本社会は人口減少に向かってゆくため、契約期間を数期に分割するのが賢明である。
 シミュレーションとして、2019年から2058年までの40年間を、5年契約を8期繰り返すとして元号価格を算出すると以下のようになる。

契約期間  推定人口値  
2019~2023年 125,320,000人 112,788,000,000
2024~2028年 122,540,000人 110,286,000,000
2029~2033年 119,130,000人 107,217,000,000
2034~2038年 115,220,000人 103,698,000,000
2039~2043年 110,920,000人 99,828,000,000
2044~2048年 106,420,000人 95,778,000,000
2049~2053年 101,920,000人 91,728,000,000
2054~2058年 97,440,000人 87,696,000,000
継続40年契約 総額809,019,000,000円(約8000億円)
(各期間での契約金額計算式:225,000,000円/1,250,000人×<推計人口値>)

 

参考資料

元号命名権という発想 | ちきゅう座

高齢社会白書について - 内閣府