AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

アニメ『Ingress: The Animation』感想

 

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 アニメ『Ingress: The Animation』(2018年冬)全11話を見終えまして、その感想を綴ります。

アニメ『Ingress: The Animation』あらすじ

2013年、スイスの原子核研究機構『CERN』──。ヒッグス粒子発見の影で、ある秘密プロジェクトが発足した。そのプロジェクトの名前は『ナイアンティック計画』。その目的は人間の精神に干渉する未知の物質を研究することにあった。
『エキゾチック・マター(XM)』と呼ばれる事になるその物質は、古来より人々の精神・能力に感応し、人類の歴史にさえ大きな影響を与えてきたのだった。
世界各国の機関が、秘密裏にその研究に取り組んだ。XMは、人類の希望または脅威とされ、大国や巨大企業による争奪戦が巻き起こってゆく。
XMの力を受け入れ、人類の進化に利用しようとする『エンライテンド』。XMを脅威と見なし、コントロールしようとする『レジスタンス』。
世界はふたつの陣営に別れ、今も争い続けている。この世界で起きている争いの背後には、XMの存在があったのだ。
そして、2018年──。
東京、そして世界を舞台に、XMをめぐる新たな戦いが幕をあける。
アニメーション、オンライン位置情報ゲーム、そして現実がリンクする、かつて体験したことのない新たな「拡張現実エンターテインメント」が、始まる。

(TVアニメ『イングレス』公式サイトより引用)

ingressanime.com

 原作は、世界的なムーブメントとなった『Pokémon GO』(ポケモンGO)の前身であり、位置情報ゲームの草分け的存在となった同名のアプリです。世界各地、身の回りの”ポータル”を奪い合う陣取り合戦に、同ゲーム製作会社ナイアンティック(Niantic)CEOのジョン・ハンケ氏が物語を吹き込んでいます。

 全体的なストーリーとしては、主人公・誠が謎の女性・サラと出会い、XM、Ingress、ナイアンティック計画といった事件に直面する巻き込まれもの、SF、セカイ系、(すこし)ボーイ・ミーツ・ガール、バディものの部類です。
 ゲームアプリが原作ですが、それをやったことがなくてもストーリーは理解できる作りになっています(ちなみに自分は数日だけプレイ経験があります)。

 

数的評価

(各項目:5.0満点)

  • 物語:0.5
  • 作画:2.0
  • 声優:2.0
  • 音楽:2.0
  • キャラクター:1.5 

物語

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 正直いって残念な内容でした。
『Ingress』は妥協なき陣取り合戦ゲームであり、その様子がアニメでも描かれると期待していました。『エンライテンド』陣営は誠が、『レジスタンス』陣営はジャックが旗役となって、ヒロインのサラを奪い合う激しい三角関係の末に、共闘関係となる筋書きを考えていました。しかしながら、物語の序盤で都合のいい衝突があった後にすぐ誠とジャックは協力関係になり、あとはアニメに向けて用意された「ヒューロン」や「コラボレーターズ」という第三組織と戦ってゆくことになります。確かにエンライテンドとレジスタンスの戦いになれば、お互いが傷付く結果にはなるかもしれませんが、それこそが陣取り合戦であり『Ingress』の真骨頂なはずでした。
『Ingress: The Animation』の世界では「エキゾチック・マター(XM)」が実在するという設定で、そして作中のアプリ『Ingress』は一般人が可視化されたXMの源の「ポータル」を、そうとは知らずに争い合う人気ゲーム、となっています。ゆえにアニメの中でスマートフォンを操作してゲームに勤しむシーンも映るわけですが、それがただ画面をタッチしているだけで、とても熱心にプレイしているようには見えませんでした。ゲーム『Ingress』はとても難しく、複数人と手早く行動しないとポータルの攻撃や防衛は成り立ちません。そこが『Ingress』の醍醐味でもあるのですが、その辺りの描写が不足していました。
 また、ストーリーは東京から始まり、京都、大阪、インド、スイスと移ってゆきます。元が位置情報ゲームなわけですから、旅をするのはとてもよいとして、観光スポットとそのポータルの雰囲気などをもう少しその行程をしっかりと描いてほしかったです。昨今では”聖地巡礼”や位置情報などの仮想的な情報が現実世界を覆い、そこで生活している人々に迷惑をかける事案が多発しており、それに配慮する形であまり明確に描けなかったのでしょうが、やっぱり腑に落ちない部分はありました。
 さらにいえば、登場人物の何人かは「センシティブ」という特別な力を持っているのですが、その能力は所属する陣営エリア内でないと十分に発揮できない、という設定にもかかわらず、終盤ではそれが無視されて使い放題という状況でした。 

作画

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 人物はフル3DCGで、背景や小物も簡素です。『Ingress: The Animation』は「+Ultra」というフジテレビ・ノイタミナ後継枠のアニメであり、世界展開を意識しているための3DCGなのでしょうが、登場人物の数が少ない上に極限の状況まで追い込まれるシーンもあるので、表情は3Dを用いずに描いた方がより効果的だったと思います。XMやポータルといった仮想エネルギー空間はしっかり表現できていてよかったです。SFチックなアニメなのでコンピュータルームや研究所のシーンも多々あるのですが、背景の機器はライトが点いているだけで”動いている”雰囲気がまったくありません。もっと大小様々な形の機械を並べたり、点滅が不規則であったり、雑多に散らかっていたりするとリアリティがあるはずでした。 

声優

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 実力はあるはずなのですが、キャラクターのそれぞれが画一的な役割を与えられているせいなのか演技に幅が少ないように感じました。もう少し舞台演劇のごとく過剰なアピールをしたり、黒く絶望してつぶやいたりしてもよかったのではと思います。劉天華(CV:鳥海浩輔)は石田彰が演じているのだと思い込んでいましたが、いい”ラスボス感”を醸し出していました。 

音楽

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 音楽は控えめで、テーマ曲もあまり印象には残っていません。OP「Tessellate」は物語の幕開けを暗示させる気怠げな雰囲気で、ED「In Cold Blood」は反対に現実と虚構が入り交じる集約的な曲となっていて、本編への導入、そして締結にとてもマッチしていると思います。 

キャラクター

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 物語や声優のところでも少し書きましたが、各人物に明確な役割を与えすぎていて、次の行動が簡単に予測できてしまうので面白みがないです。主人公の誠は無知ながらも特別な能力を持っていて、視聴者の分身となって導かれつつ成長する好青年、サラは明るく、そして決して諦めない強いヒロインで、誠にポータルを見せる機能的な役割も担っています。ジャックは寡黙な仕事人でかつ義理堅い男で、劉は目標を達成するためなら手段を選ばない冷酷な人物です。分りやすくはあるのですが、意外性もなくありふれた結末へと一直線に突き進むしかなくなってしまっています。ギャグを入れたり、キャラクター同士の禅問答があってもよかったのではと思います。 

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 ただ1つよかったことを挙げると、作中の「ヒューロン」、「ヒューロングラス」、「コラボレーターズ」の描写です。これらは現実世界でのNianticやGoogle、Google Glass、Alphabetの形容であり、それらを陰謀論や世界支配を企む悪役と描いている皮肉が痛快でした。

 一応は続編が作れそうであり、新リリースゲームアプリ『Ingress Prime』にもつながる内容になっています。なので、「旧『Ingress』はやっていないけど『Ingress Prime』からプレイしてみたい」という人にとっては、これまでの『Ingress』のストーリーを濃縮した形となっているので『Ingress: The Animation』の視聴はオススメです。

 

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