AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。愛知県在住。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

小説『掟上今日子の色見本』感想

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 西尾維新による小説『掟上今日子の色見本』を読み終えまして、その感想を綴ります。

 

掟上今日子の色見本・あらすじ

 誘拐された忘却探偵。ボディガードの僕には、毎日が“彼女を守るラストチャンス”
掟上今日子は預かった。返してほしければ、十億円用意しろ」置手紙探偵事務所唯一の従業員・親切守が受けた、突然の脅迫電話。天涯孤独の忘却探偵を救い出せるのは自分だけ。今日子さんのような推理力はもたないけれど、彼には今日子さんとの「記憶」がある。手探りで捜査を開始する守。一方、今日子さんは犯人のもとで目を覚まして――?
 純白の名探偵&青年警備員VS. 漆黒の誘拐犯! 頭脳戦の結末は!?
講談社BOOK倶楽部より引用)

bookclub.kodansha.co.jp

掟上今日子の備忘録』からはじまる「忘却探偵シリーズ」の第10巻です。今回は今日子さんが攫われたことを発端とする長編であり、彼女のボディーガードである親切守と、誘拐犯による双方向から語られます。また、脇役として『備忘録』の語り部であり「冤罪体質」の隠館厄介、『裏表紙』の語り部であり「冤罪製造器」の日怠井警部も登場します。
『色見本』の全体的な雰囲気としては、同じ長編である『遺言書』や『旅行記』に似ています。一方で、主題が今日子さん自身である点、また誘拐犯との頭脳戦である点から、『備忘録』への原点回帰を覚える一冊です。

 

掟上今日子の色見本・感想

 探偵・誘拐犯・警備員による三つ巴の展開で、特に前半のスピーディな展開が見事でした。守は様々な知恵を絞ったり、厄介や日怠井警部の助力を求めたりして状況を打破しようとするのですが、誘拐犯の方が一枚上手で、やや一方的な頭脳戦という感じでした。誘拐犯による語りのパートが本編のほぼ半分ほどに割かれており、ミステリにありがちな謎や疑問点の引っ張りが少ないどころか、すぐに明かされるのでエンターテインメントとして読みやすく、即時応答的な面白さがあります。
 反面、誘拐犯は語り部も担っていることから、キャラクターとして親近感を覚えてしまうために、カリスマ性や悪意をどうしても感じることができません。そもそも今日子さんと比べると誘拐犯は格落ちな雰囲気が隠しきれません。作中でもすべてが計画通りとはいかずに誘拐犯は追い詰められ、最終的には今日子さんは脱出し、誘拐は失敗に終わります。その流れの予感が後半から簡単に予想可能であるところが残念でした。
 またタイトルにあるように「色見本」が鍵になってくるのですが、それは最後のトリックのためのアイテムにすぎず、全編を通してのテーマ性まで備えているわけではありません。なのでタイトルが内容に合っていないように感じました。

『色見本』をもって忘却探偵シリーズは10巻目を迎えるわけですが、作中ではまだ『備忘録』から1年も経っていないようです。内容から『色見本』は時系列的に最も進んでいると考えられるのですが、やはり今日子さんの過去についてはよくわからないまま終わってしまいました。
 今回は色という視覚によるものでしたが、次巻の予告タイトルが『掟上今日子の五線譜』(2018年夏発売予定)ということは音がテーマのようです。もし五感それぞれについて一冊を書き上げるなら、「指紋跡」、「献立表」、「化粧紙」というようになるかもしれません。想像するだけで面白そうなので、忘却探偵シリーズはまだまだ長く続けてほしいです。