AYUTANINATUYA

20代の工場作業員だってこんなことを考えている

ドキュメンタリー『eスポーツ: プロゲーマーたちの闘い』感想

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 ドキュメンタリー番組『eスポーツ: プロゲーマーたちの闘い』(2015)を見終えまして、感想を綴ります。
 
『eスポーツ: プロゲーマーたちの闘い』あらすじ
 爆発的な人気を集め世界的な現象となっているeスポーツ。その頂点ともいえるエクストリームマスターズ大会に挑む代表チームを追うドキュメンタリー。
Netflix紹介文より引用)

 

eスポーツとは何か?

 他人がゲームするシーンを見続ける。そんなことをスポーツとして捉え、会場をセッティングして、興行として盛り上げる。これが「eスポーツ」なわけですが、その世界をフィルムに収めています。eスポーツの意味が分からなくても、紹介しているゲーム(League of Legendsなど)を知らなくても、番組内でしっかり説明すると同時に、それが持っている魅力と熱量を伝えてくれます。

 そしてポイントとして考えたいのが、そのドキュメンタリーの中心人物が、ゲーム大会を運営するプロデューサーという点です。確かにプロゲーマーと呼ばれる、大会の賞金やスポンサーとの契約で収入を得て生活している人も登場しますが、あくまでも制作側の視点からeスポーツの世界が描かれます。そこには資金繰りの難しさがあり、ネットワーク切断のアクシデントがあり、後々のキャリアへの不安があり、そして莫大な賞金という夢があります。

 

eスポーツに関わる人たち
 一方で、それほどゲームに熱意のなさそうな人も登場します。プロ・ゲーマーは、それこそ取り憑かれたかのように画面を注視していますが、彼らのマネージャー、コーチ、スタッフは、ゲームのルールを知る程度に留め、スケジュールを立てたり、資金を集めたりしています。ある程度の時間を設ければ十分に内容を理解できるほど、一般的な仕事をしています。それほどに海外では、eスポーツやプロ・ゲーマー、そしてそれに関わる人たちが世の中に認知され、働く選択肢に容易に挙がるほど充実したキャリアであることが想像できます。
 さらにいえば、すでに海外ではeスポーツの草創期に活躍したプロ・ゲーマーが引退し、彼らはコーチやマネージャーに転身して現在のゲーム界を支えているようです。一方、日本ではそこまでの流れはできていないようです。十年単位で培ったノウハウの溝を埋めるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
 
スポーツとして意味づけ
 番組の冒頭では白黒の映像で、野球、サッカー、アメフトといった、数々のスポーツがプレイされるシーンが流れます。そしてゴルフを例えに、興行化の難しさが語られます。
「ゴルフが初めてスポーツの種目になったとして、スコットランド人が、ボールを500ヤード打って穴に入れ、小さな旗を立てる。そういうスポーツを放送して欲しいと言われても、誰も相手にしないでしょう」
(IEM司会 ポール・シャロナー)

 新しいものを今ある似たような文化になぞらえることで、人々は受け入れやすくなる反面、よくない一面も取り込むことになります。ゲームを“スポーツという競争”として意味づけしてゆけば、必然的に勝者と敗者が生まれ、そしてその数には敗者が圧倒的に多くなってしまいます。

 ゲームにも反射神経や適応能力は求められ、それらは年齢と共に低下してゆくことから、ゆくゆくは引退が待っています。しかしその後の生活をどうするのか、という問題もあります。
 そしてゲームそのものも新作が出たり、続編が封切りになったりします。最近ではオンラインアップデートで内容が大きく変わることも多いです。そういった環境では、これまでの環境での努力が一瞬で泡に帰してしまいます。でもいつまでも同じ内容のゲームが高い人気を持ち続けるわけもなく、いつかはプレイする作品を変えなければなりません。そういったジレンマを含んでいます。
 他にはゲーム界そのものが男性中心のマッチョなものなので、女性プレイヤーの肩身が狭かったり、普通のスポーツと同様の八百長や、ゲーム特有のチート行為といった課題を抱えてしまっています。
 
ゲームが好きだった人へ、そしてゲームが好きな子供を持つ人たちへ
 冒頭にも述べたとおり、あくまでも中年の、ゲーム大会運営プロデューサーの立場からeスポーツの世界が開かれます。自身もゲームが好きなものの、大会には出場せず、周りの10~20代の若きプロゲーマーを支える役目を全うしつつ、家庭を持ち、世界を飛び回る姿が描かれます。盲信的なeスポーツ推進映像ではなく、客観的な立場から、eスポーツの光と闇を映し出し、その世界に居る人や飛び込む人の理解を深める内容になっています。以前にゲームセンターに通い詰めた経験がある人なら、その頃の懐かしさを思い出せることでしょう。そしてゲームを1日中やっているような子供を持つ親世代に対しては、このドキュメンタリーを見ることで、ゲームと人との関わり方を知って、よりよい言葉を交わすことができるようになるでしょう。