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AYUTANINATUYA

20代の工場作業員だってこんなことを考えている

小説『掟上今日子の旅行記』感想

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 西尾維新による小説『掟上今日子の旅行記』を読み終えまして、その感想を綴ります。
 

掟上今日子の旅行記・あらすじ

エッフェル塔をいただきに参上致します。―怪盗淑女」不穏な犯行予告を阻止するため、パリに招かれた忘却探偵の掟上今日子。しかし怪盗の真のたくらみは、今日子さん自身にエッフェル塔を盗みださせることで…!? 奪われた記憶と華麗なる罠。助手役を担う隠館厄介は、怪盗の魔手から今日子さんを救えるか?名探偵vs.怪盗のタイムリミット・ミステリー!
(「BOOK」データベースより引用)
掟上今日子の備忘録』からはじまる「忘却探偵シリーズ」の8巻目です。今回の語り部は“冤罪体質”の隠館厄介であり、今日子さんと波乱の旅行を繰り広げる長編ミステリです。
 厄介が登場し、長編ということもあって、全体的な雰囲気としては『遺言書』や『婚姻届』に似ています。しかし一方で、フランス・パリを舞台に、今日子さんの態度も一転二転することから、番外編とも捉えることのできる一冊です。

 

掟上今日子の旅行記・感想

 探偵と怪盗が対決する王道ストーリーで、とても楽しめました。じつは前半で、今日子さんは自身を探偵ではなく怪盗だと思い込まされてしまい、そして怪盗として行動を開始します。助手となった厄介が説得を試みたり、怪盗を阻止しようとしたりします。すでにこの2人の立場が「探偵vs.怪盗」の構図になっており、長編にありがちな中足弛みを抑え込んでいます。
 そして、終盤での真犯人というか、仕掛け人が登場します。「なぜエッフェル塔を盗むのか?」という議論が今日子さんや厄介と交わされるわけですが、正直いって、いきなりその場に現れた登場人物が熱心に語っても、魅力というか、説得力が薄いように思いました。一方で、そこで明かされるエッフェル塔の秘密、そしてその意味の捉え方は、フランス・パリ・エッフェル塔を魅力的に伝えてくれますし、何よりもエッフェル塔に登りたくなりました。ガイドブックのような側面も備えている、面白い小説です。
 オチもスッキリする、シンプルなものです。
 
 少し残念なのは、この長編には”真怪盗”を除けばキャラクターはほぼほぼ今日子さんと厄介しか登場せず、会話劇がややマンネリ化する傾向があるところです。それとやっぱり、シリーズものなのに今日子さんの忘却の秘密には、3歩進んで2歩下がったような停滞感がありました。
 
 
 やはり海外が舞台なので、映像化に向いています。ドラマ『掟上今日子の備忘録』の特別番外編にはぜひ『旅行記』でやってほしい、と一個人としては願ってしまいます。現実的には、同ドラマの視聴率の悪さから、万が一にも実現しそうにない企画ですけれども、「忘却探偵シリーズ」のファンなら読んで退屈はしない今作です。
 
掟上今日子の旅行記

掟上今日子の旅行記