サイモン・シン、青木薫によるノンフィクション『暗号解読』を読み終えまして、感想を綴ります。
暗号解読
文字を入れ換える。表を使う。古代ギリシャの昔から、人は秘密を守るため暗号を考案してはそれを破ってきた。密書を解読され処刑された女王。莫大な宝をいまも守る謎の暗号文。鉄仮面の正体を記した文書の解読秘話…。カエサル暗号から未来の量子暗号に到る暗号の進化史を、『フェルマーの最終定理』の著者が豊富なエピソードとともに描き出す。知的興奮に満ちた、天才たちのドラマ。
(「BOOK」データベースより引用)
2010年代の暗号に関する話題といえば、本作下巻に紹介されている「量子暗号」だったり、またはコミュニケーションアプリ「LINE」で芸能人のやり取りが流出したり、暗号解読者の人生を描き、数々の映画賞を受賞した『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』だったりします。暗号はその特性上、表舞台に出ることを嫌う傾向があるかもしれませんが、現代においてその重要性は、一般の人々にとっても無視できない存在になってきているのかもしれません。
本書『暗号解読』は1997年に書き下ろされ、2001年に翻訳出版されました。しかしその内容は色褪せることなく、むしろ現在の暗号に関する状況を上手く整理しています。
不可視インクからはじまり、文字を別の文字で置き換える(A→D、B→E、……、Z→C)技術が生まれ、やがて第二次世界大戦での「エニグマ暗号」が登場します。これらの歴史と人間ドラマを追うだけで、暗号の必要性、また暗号の仕組みが理解できるようになっています(難しくはありません)。
一方で、暗号からは少し離れて、ナヴァホ暗号や線文字Bといった言葉の壁や古代文字に話題は移り、時代や環境によって暗号化されてしまった言語が紹介されます。そして最後には、コンピュータが登場した近代以降の暗号を取り巻く状況、そして将来に生まれるはずの量子暗号が語られます。じつは私たちが何気なく利用するネットショッピングにも、その購入ボタンをクリックする瞬間に強力な暗号が作動しており、そしてその暗号には遠くない未来に破られる危険性がある、ということを知らしめてきます。
確かに本書を読了したからといって、すぐさま実生活に役立てることは難しいかもしれません。ですが暗号の基本知識を理解し、そしてこれまで暗号にすべてを捧げてきた人たちの情熱を感じ取ることを、読んだ本人がそれぞれの形で発揮してゆけそうな気がします。
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06/28
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