AYUTANINATUYA

20代の工場作業員だってこんなことを考えている

ライトノベル『ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット』感想

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 川原礫によるライトノベルソードアート・オンライン6 ファントム・バレット』を読み終えたので、感想を綴ります。
 

ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット

 銃と鋼鉄のVRMMO“ガンゲイル・オンライン”で発生した“死銃”事件を調査するため、“GGO”へとログインしたキリト。一見超美少女キャラと見間違えるアバターにコンバートされるトラブルに遭った彼だったが、スナイパーの少女・シノンのナビゲートにより、全ガンナーの頂点たる対人トーナメント“BoB”に無事参戦を果たす。キリトは、銃が支配するこのゲームで唯一“光剣”を駆使、“BoB”を勝ち進む。その奇抜な戦闘スタイルが話題となり、徐々にゲーム内での知名度は上がっていった。そして“BoB”決勝。数多の強敵がひしめく“バトルロイヤル”の中、ついに“死銃”が姿を現す。果たして“死銃”とは何者なのか。本当に“仮想世界”から“現実世界”へ影響を及ぼすことができるのか…キリトは単身、“死銃”へと挑む!!『ファントム・バレット』編、完結。
(「BOOK」データベースより引用)
 大人気ネットゲーム・ファンタジー・ライトノベルの6冊目であり、ファントム・バレット編の後半(アニメ第2期の第7~14話に相当)です。
 これまでのSAOシリーズと比べても冗長さはなく、むしろよりオンラインゲームの光と影を描ききった内容だと思います。

 

 やはりポイントとして、アインクラッド編(1~2巻)、フェアリィ・ダンス編(3~4巻)にはあった義務感(オンラインの世界で戦わないと生き残れない、愛する人に会えない)が、ファントム・バレット編ではなくなっている、というところに注目したいです。GGO編以前では、やっぱりファンタジーとして意味合いが強かったわけです。現実問題、2010年代前半でVRは意パン的とはいえないですし、そもそもログインはプレイヤーの選択によって成されるわけです。いくらライトノベルとしての物語がよくできていても、それは来たるべきVR時代まで小説内に閉じ込められたフィクションに過ぎません。
 
 しかしGGO編にはリアリティがあります。確かにVR技術はスマホをゴーグルのように被る程度ですが、新しく登場した朝田詩乃(シノン)と新川恭二(死銃)の2人のように、実生活の歪みをネットの中で補おうとしている人はいます。それは重度のオンラインゲーム中毒者だったり、ひっそりと動画投稿を続けるYoutuberだったり、炎上を繰り返すツイッタラーだったりします。
 日常で実現できないことを、昔は別の日常で実現していました。普段は学校や職場に行っていて、休日には漫画を描いたり、ライブを行ったり、写真を撮ったりしていたことでしょう。しかしそれ以上の非日常感を求めて、21世紀はネットに活動拠点を広げてゆきました。
 
 でもやはりネットで活動する元は人ですから、その世界観にも人の持つ法則性が適用されてゆきます。弱い人は弱く、できない人はできなくて、注目されない人はそのままです。でもその認識が少ないわけです。ネットは案外フィードバックが遅くて、その待ち時間に「まだ可能性があるんじゃないか」という幻想を抱いてしまいます。
 シノンも死銃も、オンラインの幻想に取り憑かれていました。問題の根本を解決するためには現実と向き合う必要があったわけです。ネットに割く時間が増えた今の時代こそ、意識してリアルと接する必要がある、ということを暗に伝えているのが本作だと思います。
 
 ただ、ネットワーク、オンラインゲーム、仮想コミュニティを全否定しているわけではないです。ネットでリアルの直接的な解決はできないかもしれませんが、ネットのサポートを通じてリアルの事柄を乗り越えることはできるはずです。たぶん今の20代には中高生の頃に、例えばメイプル・ストーリーやテイルズ・ウィーバーラグナロク・オンラインにはまり込んだ人もいることでしょう。それば膨大な時間であり、貴重な青春を無駄にしたように思えるかもしれません。しかしそのときのリアルやネットの友達、そして経験は、確実に現在のネットリテラシーの柱になっているでしょうし、日常生活をも支えているはずです。
 
 という、アニメよりも深くリアルとネットの関係性を描いており、色々と考えさせられる本巻です。オススメです。