AYUTANINATUYA

脱サラ・アラサー大学院生。日記と、趣味のゲーム・書籍・漫画などのサブカルを発信してます。

アニメと漫画の比較/交響詩篇エウレカセブン

 

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 漫画『交響詩篇エウレカセブン』(2005~2007年・全6巻)を今更ながら読みました。

 オリジナルアニメ『交響詩篇エウレカセブン』の漫画版メディアミックスなのですが、そのストーリーの整理をいつかしたいなと、アニメを見た当時から思い抱いていて、ちょうど春休みだったので読んでみて、ついでにアニメも何話か見直してみました。今回の話はその個人的な回顧と想察になっています。

 

交響詩篇エウレカセブン

 人類が故郷の星を追われてから、気の遠くなるくらいの年月が流れた。新たな定住の地を探し求め、ようやく辿り着いた「約束の地」。

 そこは、珊瑚と同じ形質を持つ地表が広がり、大気中にこれまで人類が感知したことのない「トラパー」と呼ばれる粒子が含まれる荒涼とした場所であった。人は、そこで生きるために大地を開拓し、「トラパー」を最大限に利用するため巨大な塔を建設した。塔下には都市ができ、各塔を取りまとめる形で、統一政府「塔州連邦」は建国されたのであった。

 

 ……それから、数世紀の時が流れた。

 

 建設の熱狂もとうに醒め、過去に栄華を極めた基幹産業も廃れて不況に揺れる世界。 

 塔の街「ベルフォレスト」で、祖父と二人暮しをしているレントンは、自分の置かれている現状に不満を持っていた。メカニック業を営む祖父のもと、選択肢のない決められた将来。それに、レントンの父は、かつてこの地に大災害をもたらした「サマー・オブ・ラブ」を、自らの命と引き換えに止めた英雄アドロック。彼の息子であるというしがらみも、レントンの気持ちを重たくさせるのだった。 

 レントンにとってのヒーローは、父親ではなく、カリスマフライダーのホランドだった。いつかはホランドのように、自由にかっこ良くリフをして、世界中の空を飛び回りたいと夢見ていた。

 

 いつか、自分にも波が来る。そう信じて――。

 

 そんなある日、レントンに転機が訪れる。突如、見たこともないLFO(特殊人型重機)ニルヴァーシュが、目の前に現れたのだ。機体から現れたのは美少女エウレカ。彼女は、体調が悪いニルヴァーシュの整備を頼みに、レントンの祖父サーストンのもとへやって来たのだった。そんな彼女に、一目ぼれしてしまうレントン

 そこに、エウレカニルヴァーシュを追って、塔州連邦軍のKLF(軍専用LFO)部隊が現れる。エウレカを守るため、駆け出すレントン。祖父が隠し持っていた父の形見である<アミダドライヴ>と呼ばれる不思議な機械を、必死の思いでニルヴァーシュに装着。すると、ニルヴァーシュは強力な力を発揮するのだった。 

「一緒に行こう」エウレカは、レントンを誘う。彼女は、憧れのホランド率いる空賊「ゲッコーステイト」のメンバーだったのだ。そして、レントンホランドから父親の話を聞かされる。

 

 真実を、そして世界を知るために、レントンゲッコーステイトとともに、旅立つことを決意するのだった。

(Project EUREKA・THE  WORLD・SUMMARYより引用)

 主人公のレントンはヒロインのエウレカと出会うことで、退屈な日常から脱出するのですが、憧れの人物や空賊はだらしなかったり、新しい環境に自ら飛び込んだつもりが、じつは予定調和的なものであったり、さらにエウレカは普通の少女ではなかったのです。

 でもそんな状況であっても敵が現れて、戦ったり、悩んだり、傷ついたりしながらもレントンは自分自身や、世界の真実や、エウレカのことを知ってゆく、という物語です。

 

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 端的にいうと、異世界が舞台の冒険活劇であり、恋愛ものであり、SF・ロボットものです。設定やあらすじだけなぞると普通のボーイ・ミーツ・ガールなのですが、このアニメの特徴として、色彩と劇中音楽による独特な雰囲気が素晴らしいです。

 一方で、わけのわからないシーンや演出もたくさんありまして、物語構造は難しいです。

 

 漫画版『交響詩篇エウレカセブン』はどうなっているかといいますと、大まかなストーリーの流れはそのままで、細部や結末がちょっと変更されています。

  • アニメのビームス夫妻をはじめとするキャラクターが登場しない
  • 多数のサイドストーリーが省略されている
  • ニルヴァーシュやタイプ・ジ・エンド(アネモネの搭乗機)が形態変化しない
  • 死亡したり負傷したりする人物が多い

などです。基本的にレントンエウレカアネモネ(敵軍のヒロインパイロット)・ドミニク(アネモネの補佐)の鏡像関係、そしてホランドとデューイ(ホランドの兄でありアゲハ構想の実行者)の対立構造は変わりません。むしろ漫画を読んでいて、誰がどういう理由で行動しているかはアニメよりよく伝わってくる気がします。

 

 さて、漫画版とアニメ版の本格的な感想について、正直なところ、アニメの方が好きです。どうしても“思い出補正”がかかってしまうのですが、やっぱりアニメ版の鮮やかなコントラスト、音楽との親和性、キャラクターの感情が揺れ動くカットがあったすぐ後に、ミサイルやレーザーがグーンと追ってくるシーン(板野サーカス)がものすごい速さで流れて、単純にすごいです。

 それに比べると、漫画版はストーリーをなぞっているだけで、色彩や音楽、映像の連続性といった効果が得られないと、どうしても物足りない感覚が沸いてきます。

 

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 漫画版をサポートしておくと、作画は常にハイレベルで、特に構図がよく練られていて、「白黒でもこんな不思議空間が表現できるのか!」と感動したものです。

 それに漫画版は横道的な話がほとんど無くてすごく読みやすいです。

 裏を返せば、アニメ版は全50話でサブストーリーも多く、少々中だるみします。でも冒険ものにおける“到達感”は余談的な回も含めて、ある程度の長さが必要なように思います。漫画版には紙幅の都合もあったでしょうが、アニメ版をコンパクトにまとめているだけ、というふうに見受けられます。

 

 もうちょっと漫画版の良さを知らせておきますと、エウレカについて、彼女はアニメ版の中盤で事件に巻き込まれて、顔や体に傷を負ってしまいます。そしてその状態で終盤まで映されるのですが、見る側にとって、怪我した少女なんて見ていられないわけです。申し訳ない気持ちになってしまいます。

 漫画版はその点、怪我の程度がずっと軽傷ですし、いつもショートカットで可愛いです。

 あとは台詞が活字になっている漫画版では、よりキャラクターの気持ちが伝わってきます。レントンホランド・ドミニクの男たちの熱い台詞とか、エウレカアネモネのか細い告白なんてのは、文字になっていると味わいやすいです。

 

 以上、アニメおよび漫画『交響詩篇エウレカセブン』についてでした。続編『エウレカセブンAO』についてもいつか語りたいと思います。

 

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