AYUTANINATUYA

20代の工場作業員だってこんなことを考えている

「話すのとどう違うの?」/イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密・感想

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洋画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)を見まして、

感想を綴ろうかと思います。

 

まず当映画のあらすじについて。

第2次世界大戦下の1939年イギリス、

若き天才数学者アラン・チューリングベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の

暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読を

ゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れ

その目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、

思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。

(シネマトトゥデイより引用)

数学者・チューリングの伝記映画です。

自分はチューリングについて、暗号解読よりも人工知能に関するところで知ったのですが、

今作ではエニグマ解読と、ヒューマンドラマも含めた、その周りの様々な問題に

直面するチューリングが描かれます。

 

よくある「天才・変人・孤独」の典型としてチューリングは映し出されていますが、

暗号の解読という(難しいけれども)単なる仕事について、

その基礎(暗号とはどういうものか)を観客に説明するシーンが導入部にありまして、

その後に、なぜチューリングが数学や暗号解読に取り組むようになったのかを

描くシーンがあります。友人が暗号解読の本を読んでいるときの会話で、

「話すのとどう違うの?」

「みんなが口に出す言葉は本当の意味とは違っているよね。

だけどみんなちゃんと意味がわかる。僕は分からない。それと、どう違うんだろう?」

という台詞は、他人と上手くコミュニケーションが取れないチューリングの立場を思うと、

彼が暗解読に打ち込むきっかけになったような真実味を帯びている気がします。

(史実かどうかはさておき)

 

あと面白かったのが、チューリングエニグマ解読のために作った装置に

「クリストファー」(チューリングの友人の名前)と名付けるところですね。

アポロ11号」とか「Windows10」とか「メルセデスCクラス」とか、

たぶん海外だと無機的か、もしくは神話的な名前をとることが多くて、

それはアポロ11号とかが非人間的であることの暗示だと思うんですけど、

チューリングはあえて友人の名前を採用してしまうところが奇妙でした。

装置・クリストファーはチューリングのものではなくて解読チームの財産でありますし、

たぶんクリストファーは一通りの完成の後にも改良が加えられて、

「クリストファー2」のような状態にもなるでしょうし、チューリング以外のチームの皆も、

友人を呼ぶように、その装置のことをクリストファーと呼ばなければならないところに、

結構な抵抗感があるだろうなと想像していました。

このチューリングの「機械と人間の同一視」感覚が、暗号解読のさらに先の人工知能

つながってゆくわけですが……これも、本当らしいエピソードで良かったです。

 

本作ではチューリングが暗号の解読を始めて、その壁に当たって、やがて解決する、

という一本道ではなくて、社会性差別や、同性愛、軍事情報の扱いやスパイについても

描かれるわけですが、正直いって詰め込みすぎだと思います。

事実に基づくドキュメンタリーだとすれば仕方ないかもしれません。

 

それと表題のイミテーション・ゲーム(模倣ゲーム)は暗号解読というよりかは

人工知能に関する言葉であり、あまりしっくり来ない人も居るのではないかと予想します。

たぶんチューリングにとっての暗号解読は、物事の取っ掛かりのようなもので、

イミテーション・ゲーム(人間とは何か?)が重要な意味を持っていたかもしれませんが、

そういった当人の焦点を描くにはフィルムの時間が足りなかったようです。

 

映画のテーマはどちらかといえばコアな方だとは思いますが、

チューリングを演じるベネディクト・カンバーバッチの目の動きがとてもそれらしくて

素晴らしいので(当映画で第18回ハリウッド映画賞 男優賞受賞)、

演技の面でも見所のある映画だと思います。