洋画『プリデスティネーション』(2014)を見まして、感想を綴ろうかと思います。
まず当映画のあらすじについて。
1970年、ニューヨーク。とあるバーを訪れた青年ジョン(セーラ・スヌーク)は、
バーテンダー(イーサン・ホーク)に自身が歩んだ人生を語る。それは女性として
生まれて孤児院で育ち、付き合っていた流れ者との子を宿すも彼に去られ、
さらに赤ん坊を何者かに誘拐されたという壮絶なものだった。
それを機に男性として生きることを選んだジョンに、
バーテンダーは未来からやって来た時空警察のエージェントだと明かす。
驚く彼を自分の後継者に選んだバーテンダーは、装備を託すとともに宿敵である
爆弾魔との対決に臨んでいく。
(シネマトゥデイより引用)
タイムトラベル・タイムパラドックスSFですが、この映画のポイントは両性具有です。
いわゆる“ふたなり”で、男性のものと女性のものを両方持っている人物が登場して、
悩んだり性転換したり性交渉したりします。ここまではストーリーの展開として
ドラマ的ではあるもののそれほど難しいものではありません。しかしそこに
「タイムトラベルを持ち込んだらどうなるか?」にチャレンジしたのがこの映画です。
少しネタバレしてゆきますと、
元々女性(ジェーン)で、後に出産(子供)して、男性になるジョンの関係について、
実はジェーン=ジョン=子供という構図なのです。
ジェーンとジョンが同一人物なのは当然なのですが、
彼女と子供をもうけるのは未来からタイムトラベルしてきたジョンで、
そして生まれてきた子供は過去からタイムトラベルしてきてジェーンになります。
こういうむちゃくちゃな関係性には矛盾がかなり残るのですが、
(例えば、最初のジェーンはいったいどこから来たの?とか)
そういう事柄を抜きにしてもテーマが新鮮で興味深いです
さらに、その半生を語り、事実を知るまでの会話劇が面白いです。
おそらくこの映画を見るまでに「この映画はSF映画だろう」という先入観を、
自分は持っていたのですが、始まってしばらくは先ほど説明した会話劇が続きます。
「会話劇はテンポがいい、でもふたなりの話で、SFの話が始まらない」という、
心地よい焦りを生み出す絶妙な映画になっています。
やや残念なところを挙げておきますと、前半が良かった反動か後半の流れはイマイチです。
正直いって、未来で暗躍する爆弾魔はカメラに映る必要はなかったように思います。
それと、タイムトラベル・タイムパラドックスSFでしばしばテーマに挙げられる
自由・選択・運命・意思といったものについても言及されるのですが、
尻切れトンボで終わる感覚があります。
性とタイムトラベルだけに焦点を当ててほしかったです。
また、頻繁にタイムトラベルと映像のカットバックをするので、
映像がどの時間軸の話なのか理解しにくいです。単純に見ていて疲れます。
この映画の原作『輪廻の蛇』(ロバート・A・ハインライン)は短編小説のようですが、
かなりきわどい内容のものを上手く映像化できていると思います。
マニアックなストーリーを楽しみたい人にオススメの映画です。
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