『NARUTO-ナルト-外伝~七代目火影と緋色の花つ月~』を読みまして、
かなり面白かったのですが、少々腑に落ちない部分もありまして、
それとなく綴ることで自分なりに整理しようと思います。
外伝のあらすじは、忍者による大戦が終わって平和がしばらく続いた木の葉の里で、
「うちはサラダ」は修行を積んでいたけれども両親と不和を起こしてしまいます。
そんなときに写輪眼を持つ敵が現れて……というものです。
写輪眼とは『NARUTO』本編にも頻繁に登場する強力な“眼”のことでして、開眼すると
動体視力に優れ、幻術を見破ることができ、相手の忍術をコピーすることができます。
さらに成長すると瞬間移動ができたり、相手を強力な幻術に陥れたりできるものの、
本来は「うちは一族」だけが使用できる特殊な能力なので、
作中では写輪眼とその使い手にはかなりのスポットが当てられ、
また他の者はなんとしてもその強い力を盗もうとします。
(以下の内容には『NARUTO外伝』のネタバレを含みますが、)
写輪眼を持つ敵「うちはシン」は術や人が進化するために平和を終わらせようとし、
その中で遺伝子や進化のプロセス、さらには親と子の繋がりが語られます。
話は変わりまして、先日『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』(吉川浩満)を読みました。
この書籍では、ふつう「生存」の観点から論じられる生物進化について、
「絶滅」から生命の歴史を眺めることによって進化論の基礎を整理し、
さらには科学哲学にも分け入ってゆくという重厚な内容(ゆえに複雑?)なのですが、
鍵となるところを抜き出すならば、進化とは“運”である、ということです。
絶滅には様々なパターンがあるそうなのですが、恐竜を例に取れば、
その生物は白亜紀では最も栄えた、言い換えれば最も“進化した”存在だったのですが、
巨大隕石の落下(K-T境界)により種が減少してしまいます。
絶滅ではなく“減少”と表すのは、どうも隕石の落下により一瞬で恐竜を消し去るのは
無理だったようであるためです。恐竜の数は少なくなってしまったものの、
一応は地球上で最も優れた生物なので、種としての立て直しが図れるかと思いきや、
隕石衝突の際の塵が地球上空を漂って太陽光を遮り、恐竜のエサとなる生物が
居なくなってしまったために恐竜も居なくなってしまった、ということだそうです。
ここでのポイントは、恐竜にとってコントロール不能な隕石の落下と、その二次災害による
寒冷化がそれら自身にとってたまたま不利なルール変更だったということです。
つまりは“理不尽な絶滅”であり、生き残るには運が必要だった、ということです。
立ち返って『NARUTO外伝』では先に述べた「運による進化」ではなく、
正統的な進化論が振りかざされます。写輪眼は確かに強力なのですが、
その正統進化論に従うならば、とうの昔にうちは一族や写輪眼の持ち主が頂点に
いなければならないものの、実際のストーリーはそうなっていません(一族は2人だけ)。
しっかり読めばそういった物語の“ほころび”が見えてくる、というか学者や研究機関が
なさそうな世界観なのに「遺伝子という考え方」はあること自体が驚きなのですが、
そういった雑事を感じさせないくらいスピーディーな展開、そしてアクションや構図に
優れた外伝でした。この1冊で外伝は完結というのがとても残念です。
NARUTO―ナルト― 外伝 〜七代目火影と緋色の花つ月〜 (ジャンプコミックス)
- 作者: 岸本斉史
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/08/04
- メディア: コミック
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