先日、大学のゼミにて前期研究報告のプレゼンが終了し、
(順番としてまだの人も居るので、あまり大声ではいえませんが、)
僕としては夏休みに入りました。
就職活動だったり、研究が上手くいかなかったり、さらには研究する気がなかったりと、
その前期研究報告の内容が薄かったので、今年の3月頃から人目をはばかって
コソコソ実験していた別の研究内容をおまけで付けて発表したのが、
「PM燃焼触媒Ag/CeO2における第2金属添加実験」です。
研究を始める段階で、アウトローといいますか、非正統的なテーマだとは自覚していたので、
そんな雰囲気に見合うようなスライドを作りたい、作った上で皆の反応を観察したい、
という狙いを据えてデザインしてみたのですが、先生は眉一つ動かさないまま
研究内容にコメントしはじめまして、正直なところ不完全燃焼なので、
(こうして自らを語ってゆくのは恥ずかしさもあるものの、)
防備録としてその内実を書き残そうかと思います。
デザインテーマの根底にあったのは伊藤計劃(1974-2009)の小説『ハーモニー』に
登場するEmotion-in-Text Markup Language(etml)です。
ジョージ・オーウェル(1903-1950)というイギリス作家の小説『1984年』では、
政府が意図的に戦争を起こすことで人口や経済をコントロールし、
様々なメディアを自由に操ることで世論を1つにした世界が描かれ、
非理想的な社会を意味する「ディストピア」という単語が生まれるのを助けました。
ディストピアの本筋(社会構造)が奥深いのは当然なのですが、
それを演出する表現に一癖あるのが注目すべきところでして、
先の『1984年』には「ニュースピーク」という、極端に語彙の偏った英語が登場します。
そして『ハーモニー』はetmlによって語られ、なかなか面白い試みだと思います。例えば、
<definition>
<i: 大人になること、それは>
<d: WatchMeを身体に入れて>
<d: どこかの生府の合意員になって>
<d: 生府のサーバにカラダを繋がれて>
<d: 生活指標をどこぞの健康コンサルからもらって>
<d: 共同体のセッションにオンオフ両方きちんと顔を出す>
</definition>
つまりは、そういうことなのだ。
のように、文章の修飾・被修飾関係や並列関係が理解しやすく、
<definition>の時点で読み手は「以下は何かの定義をするのだ」と身構えることができる、
つまりは日本語の複雑さを解消できる魅力を持っています。
一方、文章表現でないとその実力をなかなか発揮できないので口頭発表には向かず、
その点では日本語や英語に分があるといえます。
それとetmlの可能性としては日本語も英語も完璧には理解できないのだけれど、
プログラミングには精通している人ならば内容が分かるかもしれない、ということです。
(コンピュータ言語は往々にして英語がベースなのでこの仮定は難しいですが、)
先の説明の通りにetlmは日本語の文法構造の複雑さを解消でき、
なおかつそれを簡単な英語で整理・対応できる点において、
元の内容(日本語・英語)をその人の母語(韓国語・中国語など)に変換するよりも
より簡単で正確に伝えることができるのではないかと思います。
なおかつ文章はそれ自体では存在せず、フォントや文字サイズ、上付き・下付き文字に
「」などの記述記号、空白や改行などの要素を含んで成立するため、
人は未知の言語を見るとき、加えて既知の言語を読むときには非言語要素にも注目します。
それらの隠れた能力を活かしつつ既存の言語を拡張して用いることのできるetmlは
もっと市民権を得てもいいはずです。
内容をやや本筋に戻しまして、僕自身がまだetlmやそれに類する言語に不慣れなために
この文章そのものを記述することは叶いませんでしたが、
様々な内容物をより正確に語る、そのことにより関心を払っていこうと思います。